第19話 ママ活ですよ…
夕夏が帰ってきた30分後に陽太が家の玄関を開けた。『寄り道』はせず真っ直ぐ帰ってきたらしい。靴を脱いだ陽太を夕夏はリビングに呼びつける。暗い顔の陽太を見て、先程目があったのは気のせいじゃないと確信した。
「さっきS駅で陽太くんを見た。女の人と歩いてたけど、誰なの?」
「……」
「恋人…には見えなかったけど?それに、ホテル街に入っていったよね?」
「……夕夏さん、今日は休みだったんじゃないんですか?」
「私の質問に答えてっ!」
テーブルを叩いて怒鳴る夕夏。なるべく怒りは抑えたかったが、ずっと俯いたままの陽太を睨んだ。
「ママ活ですよ…」
「……ママ活?」
「パパ活の女性バージョンです。端的に言えば、『援交』です」
予想はしてた。でも、本人の口からはっきり言われると、心的ショックがさらにあった。
「なに?それ…なんでそんなことしてるの?」
「……お金が…欲しかったんです」
「なんで?学費の心配はしなくていいって言ったよね!何か欲しいものがあるなら言ってよ!」
陽太は口を
「いつから、そんな事してるの?」
「……1年前からです」
「そんなに前から?」
「ええ、生活費を稼ぐために…してました」
『生活費』という言葉に夕夏の心臓がぎゅっと絞まった。『あの女』が関わっていると直感した。
「もしかして……姉がさせてたの?」
「はい…精通したんなら立派な男だろって。稼いでこいって言われました」
動悸が激しい。背中から嫌な汗が出て悪寒に支配される。あのクズはどれだけ汚物を吐き出せば気が済むんだろう。
自分の息子に…体を売らせて……お金を貰っていたというのか…?
「最初は『あのひと』が斡旋していたんですけど、いつの間にかそういうマッチングサイトに登録されてて、それ以降は自分でやり取りして、会っていました」
陽太の声が幾重にも重なって聞こえた。頭をナイフで何度も刺されているように痛くなって、目の前がぐらぐらする。込み上げた胃酸を押さえ込み、なんとか呼吸する。
夕夏は顔を覆って衝撃に耐えた。
この憎悪をどこにぶつければいいのだろう。臨界を越えた
「消してっっ!
今関係持ってる人の連絡先も!登録も!全部消してよぉ!」
「はい…」
陽太は静かに相手の連絡先をブロックした上で、削除した。サイトも退会してトップから消した。
「そうだ…こいつも消していいですか?」
陽太が見せてきた画面には『ミーナ』と書かれたアイコンが表示してあった。夕夏は歪めた顔で全ての元凶を睨む。
「いいよ…私も消すから」
ブロックと着信拒否して削除した。陽太はそのまま部屋に戻り就寝する。夕夏は食事も入浴もせずに布団に入った。
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