第13話 一緒に入りますか?

 7月18日に箱根の温泉宿に向かう。JR東海道本線に乗って一時間、バスに乗り換えて温泉場の入り口に向かう。そこから歩いて箱根湯本温泉の宿に着いた。

 泊まる部屋は6畳2間の和室。和室だが畳作りではなく、寝具はベッドが2つあり小洒落た作りだった。

 広々とした部屋に高揚する夕夏だったが、机と座椅子があるもうひとつの部屋を見た時、動揺した。


 部屋の奥のガラスの向こうに石造りの温泉が見えた。個室の露天風呂付きの部屋だったのだ。


「これってさ、こっちの部屋から浴槽まる見えじゃない?」


「そうですね。一緒に入りますか?」


「ええっ!何言ってんの?」


「昔は一緒にお風呂入ったじゃないですか」


「子供の頃の話でしょ!」


 確かに実家にいた頃は、陽太と一緒に風呂に入っていた。幼い彼を膝に乗せて髪を洗ったり、自分の背中を洗ってもらったりしていたが…。


 でも、今の彼は14才!まだ、子供だが絶対に無理無理っ!


「むっ、無理だよ!ダメ!」


「そうですか、ざ~んねん…」


 陽太は肩を竦めて残念そうにする。意地悪そうな顔もなんて目映いんだ。小悪魔め!


「じゃあ、俺は大浴場を使いますね」


 混浴ルートを回避して、早速お風呂に浸かる。仕切りで区切れた露天風呂に入り、開放感に癒される。


 お風呂を満喫した後は、陽太が予約しておいてくれたエステに行ってきた。人前でバスタオル姿になるのはちょっと恥ずかしかったが、いい匂いのオイルを塗られて、マッサージされて、至福だった~。


 過剰労働やポンコツ上司の事なんてすっかり消去デリートされた。


 夕夏がエステから戻ると、ちょうど夕食の時間だったので、食堂に向かう。バイキング形式の食事は種類が多くて悩んでしまった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る