子犬の皮を被ったオオカミ
第9話 雨に濡れた子犬をほっとけない
「南條くん。後でお話があるの。いいかな?」
教室で本を読んでいるとクラスメイトに呼ばれて廊下に出た。そこで待っていた女の子にそう告げられる。『また』、告白だろう。学年が上がってからすでに3回目だ。
別クラスの全く接点のない人から告白される。(もしかしたら、同じクラスだったことがあったかもしれないが、覚えてない)。目立たないように過ごしているのに、どうして目をつけられるのだろう?
3年生になってからは親しい友人を作らなかった。人付き合いが苦手な訳ではないが、1年前から『ある理由』で友達付き合いをぱったり止めてしまった。
誰かと一緒に帰ったり、遊びに行ったりする事もなく、家の事と『仕事』で手一杯だった。普段の学校生活も誰とも行動しなくなった。
放課後になり、校舎裏のプールの前に向かう。昼間の彼女がそこにいた。名乗っていたけど、どうせ断るから覚える必要はないだろう。『好きです』という彼女に『ごめんなさい』と答えた。
友達からでもダメかと食い下がられたが、丁寧に謝った。どうしてもと泣かれたので、何故自分が好きなのか聞いてみた。話したこともないのに…。
いつも一人でいる姿が寂しそうだったから、側にいてあげたいと思ったそうだ。なるほど、一匹狼の哀愁に惚れたということか…。それとも、雨に濡れた子犬をほっとけないという心理か?
何度も『ごめん』と謝って、彼女を帰した。一息ついてスマホを見ると、『ある人』からメッセージが来ていた。
『会わない?』と来ていたメッセージに『いいですよ』と返した。『こっち』の方も断れたらいいのに、そうもいかなかった。
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