なんか手慣れてないか?

第6話 処女なことは言わないでよぉっ!

 普段の炊事と家事は陽太に任せっきりだが、土日だけはなんとか夕夏が担当した。

 朝は早起きの陽太に勝てないので、彼に作ってもらっているのはノーカウントで…。

 陽太が皿洗いをしている間に洗濯機を回そうとした。色物の服から洗おうと陽太のズボンを回収する。ポケットに何が入ってないか確認すると、ビニールの感触があったので取り出した。


 それはコンドームだった。


 ちょっと固まった。中学生の陽太が何故こんなものを持っているのか?思考がぐるぐるした。もうひとつの液体が入った袋は何だろう?


「夕夏さん?」


「ふぇっ、ああ!いやぁ、これは!」


 背後から陽太が入ってきて、夕夏は証拠品を後ろに隠す。まるで息子の部屋でエロ本を見つけてしまった母親の気分だった。


「あ~、見ちゃいました?」


「えっと、なんでこんなもの…」


「ただ持ってるだけですよ。使ったりしてません。ませガキの興味です」


「でも、その…ポケットにコンドームとシャンプーを持ってる必要ないと思うけど…」


「シャンプー?それ、ローションですよ」


「えっ?」


 二人の間に微妙な空気が漂う。そういうのに関して無知な事がバレてしまった。


「夕夏さんってもしかして、男性経験が…」


「処女なことは言わないでよぉっ!」


「えっ!処女っ?」


 夕夏と陽太が口を開けてお互いの目を見合わせる。


「え~とっ、俺は『経験が少ないんですか?』って言おうとしたんですけど…まさかゼロだとは…」


 墓穴掘ったぁぁぁぁっっ!

 アルゼンチンまで貫通できる大穴をぉぉぉっっ!

 夕夏は顔を膝に埋めて猛烈に後悔する。


「夕夏さんは純情なんですね」


「なんか、バカにしてない、その言い方…」


「違いますよ。ちゃんと相手を見極めてるんでしょう?良いことだと思います。



それに…          嬉しいです」


 陽太の最後の言葉が聞こえなかったが、見上げた彼の顔は哀れみのものではなかった。


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