第4話 別にニヤついてない!
お昼休みにお弁当を開ける。買い弁じゃなくてお弁当を持ってきたのは、高校生の時以来だ。本当に陽太の家事スキルに感謝するしかない。箸で唐揚げを摘まみながらスマホを覗く。
『夕夏さん。お昼ですか?』
『そうだよ!』
『今日は何食べたいです?』
『うーん( つД`)…昨日はボンゴレだったから~今日はトマト系で!』
『じゃあ、トマトのアヒージョに挑戦してみます!がんばりますね』
陽太は犬が力瘤をつけてムキムキなるスタンプを送ってきた。夕夏は思わずはにかんで、応援する猫のスタンプを送る。
「何、ニヤニヤしてんだ?」
話し掛けながら目の前にハンバーガー屋の袋を持っている男性が座る。同じチームで同期の杉山だ。
「別にニヤついてない!」
「ふーん…てか最近、弁当だよな。今さらお料理に目覚めたのか?」
「うっさい!」
夕夏はむくれながらカフェオレを飲む。杉山はハンバーガーを頬張りながらぼやき始めた。
「てかよ~、今取り組んでるシステム。間に合うのかよ!」
「さぁね~、でも残業するなってうるさいし。いくつか工程すっ飛ばすかもね~」
「クライアントも納期設定わかってねーよな~。いや、一番分かってねーのはEMだけどよ~」
「名前出すな!」
夕夏は小声で注意する。イニシャルで誤魔化してるが、今の話からじゃ自分達のリーダーである榎本の事であるのは、明白だった。夕夏は休憩室を見回して彼の姿がないことを確認する。
榎本は勤続年数は長いが、物凄くポンコツだった。全体構造の設定や割り振り、納期までのスケジュールを自分の感覚でしか決めてくれず、夕夏と杉山はいつもそれに振り回され尻拭いをさせられる。
今取り組んでる会計システムも、予定より大幅に進捗が遅れていて、杉山の不満も溜まってきていた。
「てかよ。
「ううん。会社の待遇とかには不満ないし、稼げるかわかんないし、ないかな~」
「そっか。俺はいずれ独立したいけどな!そしたらお前ついてこないか?」
「なんで私?」
「そりゃ、仕事出来るし、気が合うし!」
「独立した時にまた誘ってよ。考えてやらなくもない…」
『本当か!』と満面の笑みを浮かべてジュースを啜る杉山。夕夏はデザートのいちごを飲み込んで会話を終わらせた。
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