友達

 最近さいきん胸熱むねあつなことがおこりすぎて、いろいろと大変だ。気持ちがおちつかないのをまぎらわすため、足をはやく動かした。乱暴らんぼうな足どりで向かった先は、海だ。学校からすぐ近くにある。青くて広大こうだいで、おおらかにふく潮風しおかぜ心地ここちよい。海をながめていると、私の心も広く心地よくなっていく。


 海辺うみべこしをおろし、楚愛そあ漠然ばくぜんと海をながめていた。かたい灰色はいいろの海辺の上で、足をなげだし座っていた。

 楚愛は、この華奢きゃしゃな手から、うすくきとおった水の球体をみだした。背景はいけいの色が、そのまま球体の色となっていた。しかし、すぐにそれはりかえられた。そこには、義洋ぎよう素敵すてき言動げんどうがうつしだされていた。

 楚愛は、うっとりとそれをみていた。


「好きなの、義洋のこと」

「うわあ!」

 何の前ぶりもなく、いきなりことだった。

 声をかけてきたのは、しゃれている、スポーツが得意とくいそうな女の子。

 楚愛は反射てきに大きな声をだしてしまった。他の人には見られたくない極秘ごくひなことをしていたからでもある。とっさに球体は背中にかくして、こっそり消した。

「今のって、魔法まほうのってやつ?」

「え……まあ、うん」

「すげぇ!」

 彼女のいきおいに負けて、うそはつけられなかった。

「雨の日に突然できるようになったんだ。くわしいことはよくわからないけど」

「いいなー、ボクこういう魔法系好きだからメッチャテンションあがる!」

 もう一回、だしてみて。と彼女はたのんだ。

 楚愛は頼まれたとおりに、球体をだした。

「うおー!!!! スゲェ!!」

 彼女は、大げさに思えるほどオーバーなリアクションをとった。

 そして、球体には義洋の姿が。

「あー! 義洋じゃん」

 彼女は、義洋に何か関係が?

「……あの、あなたは誰ですか」

「ん? ボクは凛瀬りんせ。義洋とは双子の兄と妹」

「え……」

「で、君は」

「淡野楚愛です」

「楚愛ちゃんね。あと、ボクらは同級生だから、タメ口でけっこうだよ」

「あ、うん」

 楚愛と凛瀬は、性格はまったくちがうが、どこか馬があうらしい。はじめましての人とはなかなか打ち解けない楚愛も、凛瀬とはすぐに打ち解けた。二人は、義洋のことを話題にもりあがっていた。

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