第2話

病室の中から、外を見る。

小鳥が鳴いている。


もう、何年ここにいるのだろう?


白い一室だけが、僕の世界。

不治の病になり、ここに来てからは、覚えていない。


最後の外の記憶は、10歳か・・・


気が付いたらここにいて、それ以来外は知らない。


唯一の情報源は、幼馴染のめぐみちゃん。

彼女は、毎日のように、来てくれている。


ネットとかもあるが、彼女の名前の声が暖かい。


「ちょっといいかな」


聞きなれない声に驚く。

そこには、絵本でみるような、天使がいた。


「まさおくんだね?私は、天使のことの」

「ことのさん?」

「うん。まだ3級だけどね」

「落語で言う前座なんだね」

「うまいね。座布団一枚」


拍手される。

嬉しくない。


「で、まさおくん、本題なんだけど・・・」

「うん。残念だけど、死んでもらうことになったよ」

「・・・そっか・・・」

「悲しくないの?」

「うん。覚悟はしてた。・・・で、いつ?」

「今度の日曜日・・・ちょうど誕生日だね」


そうだ・・・僕の誕生日だ。


「何か、望みはない?できるだけの事はするよ」

「・・・めぐみちゃん・・・」

「めぐみちゃん、幼馴染の?」


僕は頷く。


「彼女とデートがしたい。小さい時みたいに」

僕の一番の願いだ。


「わかった。神様にコンタクトしてみるね」

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