スタンピード
第92話 テオ達に報告
店に帰って、テオとタロウに先生たちが話したことを伝えた。
「何だって!? アリス、18階にハイオークがいたのか! それは不味いな……」
テオも、魔物が階段を越えて別のフロアーに移動するのはスタンピードが起きる兆候だって言う。
「でも、ダンジョンに騎士団や宮廷魔術団が入るってことは、魔物を間引くんだろ?」
「タロウ、既にスタンピードの兆しが見えているなら、いくら間引いても少し時間を稼ぐ程度で、スタンピードを止めることは出来ないんだ」
テオが、この前、20階~30階までの魔物が多かったのも、スタンピードの兆しだったのかも知れないと言う。
「昨日、18階でハイオークがうろついていたなら、騎士団が頑張って間引いたとしても来週にはスタンピードが起きるだろう」
「「えっ! 来週!?」」
タロウと声が重なる。
「ああ、確実にスタンピードは起きる」
「テオ、教会と冒険者ギルドにも緊急依頼が出るって言ってたよ」
「アリス、今まで聖女がダンジョンの間引きに参加したなんて話は聞いたことがない」
教会には、スタンピードが起きたら治療の依頼を頼むことになるから、前もって話を通しておくんだろうと言う……やっぱりね。
「冒険者ギルドに依頼したら、他の街にいるベテランの冒険者達が集まって来るだろうが……」
既にダンジョンの中は魔物で溢れているから、ベテランのパーティーがチームを組んでも狩れる数は限られるだろうって。
「テオ、スタンピードになったら、学園の3年生は街の見回りに駆り出されるかも……」
「アリス、それはスタンピードの話が
「そっか……」
テオは、数日後にはこの話が公になり、そうなったら他の街に避難する人や食料を買い込む人で街中がごった返すだろうと言う。だから、公になる前に備えようと言うことになった。
まず、明日の水の曜日は店を臨時休業にする。私は学園があるから、テオとタロウに食料(パンと野菜)とポーション用の瓶を買い込んでもらって、その後2人は<大森林>へ薬草と魔力草を採りに行く。私は、学園から帰って来たらポーションを作る。
そして、闇の曜日は私も休みなので、私も朝から3人で薬草を採りに行く。
「薬屋の俺達が出来ることは、薬を作って必要な人に売ることだからな。沢山作るぞ!」
「「うん!」頑張る!」
◇
夕方、ロペス様が来て、店にある自家製ポーションとダンジョン産ポーションを全て売って欲しいと言う。
「アリスは学園で聞いていると思うけど、現時点で、ダンジョンでスタンピードの兆候が確認されています。近いうちに起きるスタンピードに備えて、街中の薬屋からポーションを買い集めているのですが、テオ殿……」
ロペス様は、いくつでも買い取るから自家製ポーションを作って欲しいと言う。
「分かりました。明日、店を臨時休業にして薬草を集めに行くつもりだったんです。ロペス殿、出来上がり次第、第一騎士団に届ければいいですか?」
「はい! テオ殿、よろしくお願いします!」
今、店にあるポーションは、予備を含めた自家製ポーションとダンジョン産ポーションを合わせて40本。ロペス様は全て買っていかれた。
◇◇
翌日の授業で、フランチェ先生から、スタンピードが起きたら学園は休みになり、3年生は競技場に集合するようにと言われた。『魔物討伐の実習』で組んだ2パーティーのチームで、街中の見回りをするそうです。
荷物は必要最小限――制服・魔法の杖・携帯食・ポーション類の薬――要は、ダンジョンに入る時の準備をしておくように言われた。
「ダンジョンから溢れて街を襲って来る魔物は、ランクAやBに分類される魔物が多くいるので、経験のない君達に倒すことは難しいでしょう」
今からグループに分かれて、先ずは街の地図を見て道を覚えるように、そして<リッヒダンジョン>の魔物の特徴をもう一度詳しく調べるように言われた。
「皆さん、私達に出来ることは限られていますからね。魔物が城壁内に入って来ることはないと思いますが……あっ、インプが入って来るかもしれませんね」
フランチェ先生がグループの様子を見ながら思い出したように言う。
「「「えっ!」」」「「「インプ!?」」20階から出て来る魔物だ……」
あっ……空から入って来るのか。でもインプなら、私でも魔法2発で倒せるから、魔術科の生徒が2人いたら余裕で倒せると思う。
◇
午後の授業は、チームで集まって役割を確認した。
グレース先生が、スタンピードが起きたら、騎士団と宮廷魔術団・冒険者が使う臨時の詰所が北門・東門・西門の3か所に設置されると言う。
「皆さん、何回も言いますが、スタンピードが始まったら学園の競技場に集合ですよ」
3年生は、街の見回りと詰所の手伝いをするそうです。
――――――――――――――――
・街の見回り――学園の競技場を出発点として、Aクラスからチームで見回りをする。もし、魔物が街に入って来たら、最寄りの詰所に知らせる。(Aクラスが見回り中、Bクラスは詰所で手伝い)
・詰所の手伝い――パーティー・チーム毎に、北門・東門・西門の詰所に分かれて、物資の運搬などの手伝いをする。
――――――――――――――――
話し合いをしている時、私が街に入って来た魔物がインプの場合、見つけたら直ぐに倒す方が被害は少ないと言うと、
「何? インプはC+の魔物だぞ。ハイオークと同じランクの魔物なのに、未経験の私達で倒せるのか!?」
ミア達のリーダー、タイラー・バートン様が信じられないって顔で聞いて来たので、
「バートン様、インプがC+なのは『闇魔法』を使うからだと思います。HPもそれほど多くないみたいで、魔法を2~3発撃てば倒せます」
「そうか……。アリス、皆もタイラーと呼んでくれ」
「えっ、はい……タイラー様」
あくまで、自分がダンジョンでインプと戦った時の感想ですと言うと、ミアが「アリスは、テオさんとダンジョンに行っているんですよ~」と言う。
「そう言えば、アリスはこの前20階のワープを通したって言っていたわね」
ソフィア様、自慢しているみたいだから言いませんけど、30階にもワープ出来るようになりました。
「えっ、「20階のワープを通したのか!」」「テオさんは、冒険者だったよね」「「凄いな……」」
インプを見つけたら魔術科で攻撃し、倒した後インプの亡骸を持って報告すれば問題ないだろうって言うことになった。
「魔法を2~3発……魔術科は4人いるから競争ね」
「競争! ふふ、ソフィア様、私、負けませんよ~」
「フフ、僕も頑張るよ~」
競争ですか? それじゃあ、
「えっと、1発目いただきます」
騎士科のメンバーに驚かれて、ソフィア様達からは「あら、アリス、負けないわよ」「アリス、競争だよ~!」と言われた。
「アリスが挑発するなんて、初めてじゃないかな~? フフ、僕も負けないけどね」
魔術科メンバーはやる気満々です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます