第84話 『魔物討伐の実習』②
その後、2階・3階のフロアーでも魔物が少なかった。地図を見て最短コースで進んだからかな?
まあ、騎士科の生徒と魔術科の生徒を合わせて、100名以上でダンジョンに入っているから魔物もいなくなるか~。私達のパーティーは1番最後だったから尚更だよね。
「おっ、早いなー。ここまで来るのに2時間掛かってないじゃないか!」
4階へ続く階段に着いて、体格の良い騎士科の先生が大げさに言うけど、魔物がいなかったんです。サクサク進んで、ここまで来るのに魔物を10体も狩っていませんよ。
さっき、
「すみません! 『風魔法』を試させてください『エアーカッター!』」
と言って、魔法で攻撃していましたよ。私は階段を下りる度にみんなに『ヒール』を掛けただけで……さっきステータスを確認したけど、MPはほとんど減っていなかった。
「お前達、時間があるから4階で狩りをするか? 他のパーティーも4階で狩りをしているから、魔物の数は少ないかも知れないが……」
えっ? 複数体の狼やゴブリンが出て来るのは5階からなのに……今日はここまでですか? あぁ、初心者ばかりだから、安全にダンジョンを攻略するんですね。
みんなが4階に下りて狩りをしているなら、魔物の取り合いになっているだろうと言うことで、戻ることにした。
横道に入りながら魔物を探して、2階への階段で食事をする。階段に座ると、ソフィア様に魔法を試さないのかと聞かれたので、私は休みの日にダンジョンに来るので、ソフィア様が練習してくださいと答えた。
「そう、アリスはテオさんとダンジョンに入っているのね。じゃあ、お言葉に甘えさせていただくわ。あのね、アリス……」
ソフィア様は私が作るサンドパンを真似してみたと言って、オークハムとサラダを挟んだパンを出したので、私も自分のバッグから目玉焼きとチーズのサンドパンを取り出してかぶり付いた。
「えっ、君たちはダンジョンに入るのに、干し肉じゃなく普通の食事を持ってきたのか?」
「ええ、日帰りだと聞いていましたからアリスが作るパンを真似て作ってきたんです。イーサン様、これは片手でも食べられるんですよ。ふふ」
ソフィア様がにっこりとサンドパンを片手に見せると、イーサン様とポール様が干し肉を齧りながらソフィア様のサンドパンを物欲しげに見ている。
「そうか、日帰りだから食べ物が痛むこともないのか。僕も、次はサンドパンを作ってこようかな」
「なっ、ロレンツ! お前、料理が出来るのか!」
驚くイーサン様に、チーズやハムを挟むだけなら出来るよとロレンツ様が話している。その通りです。
「僕も作ってみようかな。干し肉より絶対に良いよね」
「ぬぐぐぐ……、ポールまで料理が出来るのか……」
イーサン様、パンを切って好きな具材を挟むだけですよ?
◇
ダンジョンから出るとまだ日は高くて、グレース先生に学園に戻った後は解散して良いと言われた。
『魔物討伐の実習』は、次の実習日までにレポートを提出することになっている。今日中じゃなくても良いんだけど、ソフィア様と相談して学園に戻ったらレポートを書くことにした。全然、疲れていないからね。
ロレンツ様達もドロップ品とレポートを提出しないといけないそうで、忘れない内に預かったアイテムバッグをロレンツ様に返した。
学園の馬車で学園まで戻ると、ロレンツ様達と別れてソフィア様と魔術科の教室に向かう。
今日のダンジョンでの行動をレポートに……書くことがない。パーティー行動での失敗点・問題点・改善点なんてあったかな?
「魔物が少な過ぎて、書くことがほとんどないわね……」
「そうですよね。ソフィア様、何を書けばいいんですか?」
ドロップ品を拾いながらロレンツ様達の後をついて行っただけで、レポートと言うより日記になりそう。
「そうね……私はアリスが掛けてくれた『ヒール』の感想と、日帰りのダンジョンではサンドパンが有益だったと書こうかしら」
「サンドパンを……? 目玉焼きに掛けていたソースが垂れてしまいました。お皿を使える状況じゃない時は、具材を考えないとダメですね」
階段で食事をした時、目玉焼きに掛けたトマトソースがこぼれ落ちてしまって、地面に落ちたソースを拭いた方が良いのか、消えるからそのまま放置で良いのか悩んだの……結局、拭いたけどね。
「私も挟んでいた野菜がこぼれ落ちてしまったから、具材は……肉だけが良いかもね」
「肉だけ……安定していて食べやすそうですね。ソフィア様」
ああ、目玉焼きじゃなく、卵にトマトソースを混ぜて焼いても良いかも。チーズも一緒に焼いてみるとか。卵は堅く焼かないと崩れてしまいそう……でも、焼き過ぎた卵はパサパサで……。やっぱり、肉で試してみようかな。
これを改善案としてレポートに書けばいいのかな?
……何か違うよね。
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