第73話 リカルド様、ご来店
リカルド様が
「リカルド様? いらっしゃいませ……」
リカルド様は学園の制服じゃなくて私服だ……庶民に見えるようにシンプルな服を選んだんだろうけど、この辺りでは見ない上等な服を着ている。すらっと背が高いから、少年というより青年に見えるかな。
年少科の頃は、みんな同じ位の背の高さだったけど、男の子達はどんどん背が伸びた。私も伸びたけど、標準と言うか……ソフィア様とミアも同じ位の背丈です。
ミハエル様はソフィア様より頭半分くらい背が高くて、ロレンツ様とユーゴはそれ以上に背が高くなったよ。リカルド様もロレンツ様と同じ位かな。
リカルド様は上品で顔も良いから、お金持ちの子息に見える……いいえ、貴族のご子息のお忍びだってバレていますよ。
「何、リカルド……様だと……。いらっしゃいませ……」
テオ、顔が怖いよ。リカルド様を追い出したらダメだからね。そんなことをしたらテオが不敬罪で捕まってしまう。リカルド様はフェルナンデス公爵家の御子息だからね。
「テオ……!?」
ほら、タロウがテオの顔を見て戸惑っているじゃない。リカルド様はお客様だから、笑顔で接客してよね。
「リカルド様、うちの自家製ポーションですか?」
「ああ、3の月にある魔術大会に参加することになったから、大会用にポーションとマジックポーションがいるんだよ」
「えっ、2年生で魔術大会に参加されるんですか!? それは凄い……おめでとうございます!」
2年生で参加出来るのは、担任の推薦があった生徒だけ。そして、2年生で参加した生徒は、余程のことがない限り3年生で宮廷魔術師の内定通知がもらえると聞いた。つまり、リカルド様は宮廷魔術師に内々定したってことだよね。
「フフ、ありがとう。兄から、アリスの店の自家製ポーションは性能が良いと聞いたから買いに来たんだけど、マジックポーションもあれば売って欲しいんだ」
兄? あぁ、宮廷魔術師のルーカス様。あの時……ドラゴン戦で、ルーカス様にマジックポーションを渡したから覚えているのね。自家製ポーションはテオが渡したのかな?
でも、マジックポーションは、テオがリアム様に売る約束をしているから店では売ってないの。数が作れないからね。
試合中に使用出来るポーションとマジックポーションの数が決まっていて、各自が用意しないといけないそうです。それなら少しでも回復量の多いポーションが良いよね。
「すみません。自家製ポーションはありますが、マジックポーションは置いてないんです」
「売っていないのか……残念。じゃあ、自家製ポーションを5本もらおうかな」
ルーカス様から、マジックポーションを売っていたら買って来るように言われたそうだけど……置いていませんとしか言えないです。
「はい。直ぐに用意しますね」
お店に並べている自家製ポーションは3本だけど、沢山作ったから在庫はあります。カウンターでポーションを袋に入れていると、タロウがスッと横に来た。
「自家製ポーションは1本銀貨3枚と銅貨3枚で、5本だと……銀貨16枚と銅貨5枚です。次回、使用済みの空ビンを持って来てくれたら、ビン代を差し引いて銀貨3枚になります」
タロウ、計算が早くなって言葉使いも良くなってきたね。
ただ……タロウが丁寧にビン代のことを説明しても、貴族の方は空ビンを持って来てくれないのよ。毎週来てくれるレオおじいちゃんですら、持って来てくれないからね。
「ああ、分かった」
リカルド様がタロウに軽く頷くと、後ろにいた護衛の方が、ポーションの入った袋と引き換えに代金を支払った。
「じゃあ、アリス」
「はい、リカルド様、ありがとうございます」
帰りがけに、リカルド様はテオに話し掛けた。
「テオ殿ですね。私は、アリスの同級生リカルド・フェルナンデスと言います。マルティネス様から許可を頂いたら、お茶をご馳走になりに来ますので宜しく」
「なっ……!!」
えっ、何でそんなことをテオに……テオの顔が固まったじゃないですか。それに、どうしてテオの名前を知って……ああ、ルーカス様ですね。
「……ゴクッ」
隣で、タロウの……息を飲む音が聞こえた。
「では、テオ殿、また来ます。アリス、学園でね」
「はい、リカルド様……ありがとうございました」
「……!」
リカルド様は微笑んで帰って行った。
リカルド様の滞在時間は短かったんだけど、長く感じたな。はぁ~、粗相がなくて良かった~。
「ぐうっ……。絶ーー対! レオ様に許可を出さないでくれと頼むぞ! 絶対にだ!」
「テオ、分かった。俺もレオおじいちゃんに言う!」
「2人とも、落ち着いて……」
もう~、テオが変なことを言うからタロウまで真似するじゃない。
……って言うかリカルド様、お茶が飲みたいなら今飲んでいけば良いのに。やっぱり、リカルド様はレオおじいちゃんに認められたいんだね。
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