第72話 初めてのダンジョン後
初めてのダンジョンは、ポーションを売らなくても余裕に稼げた。
だって、タロウが倒したスライムが、ほぼ魔石かポーションのどっちかを落とすんだよ!? ドロップ率で言うと80%はあったと思う……。
なので、途中からタロウがスライム担当になった。他の魔物(ラット・ウサギ・ゴブリン)は、タロウと私で交互に倒したけどね。テオは後から先生みたいに声を掛けていた。ふふ。
タロウに、ドロップしたポーションは店用に銀貨3枚で買い取るって言ったら、「アリス、パーティーだから3人で分ける」って、言われた。でもね~、全部タロウがドロップさせたから悪いじゃない。
「アリス、タロウの言う通りだぞ。パーティーを組んでいたら、誰がドロップさせたとか関係なく均等に分けるのが普通だ。だが、ダンジョン産のポーションは、店で売った方が高く売れるからギルドには売らないぞ」
「うん「分かった」」
テオもそう言うので、ポーションはギルドには売らずに全て店用にすることにして、代わりに私が作ったポーションを2人に数本ずつ渡したの。
「タロウ、明日もダンジョンに行くからな」
「うん!」
「アリスも行くか?」
明日は火の曜日、レオおじいちゃんが来るから店を休めないよ。
「テオ、私は店があるから、店が定休日の光の曜日に連れて行って」
「分かった」
「アリス、お土産にポーションを取って来るよ」
「うん、タロウよろしくね。ふふ」
◇◇
週明けの火の曜日、ダンジョンから帰って来たタロウは、スキルの『身体強化』と『挑発』を練習したと嬉しそうに話していた。私はレオおじいちゃんと美味しいお菓子でお茶会をしたけどね。ふふ。
そして、その週の間にタロウは10階のワープを取って、今は11階から出て来る魔物の倒し方をテオに教えてもらっているんだって。早いよね~。
◇◇◇
週末の光の曜日、2回目のダンジョンに連れて行ってもらう。
今日は試したいことがあって、辻馬車に乗る前に強めの『身体強化』を掛けた――お尻が痛くならないんじゃないかと思って――思った通りで、あんなに痛かったお尻がぜんぜん痛くない!
「ふっふっふっ、タ・ロ・ウ、良いことを教えてあげる。『身体強化』を掛けたら、お尻が痛くないよ」
「……えっ」
勿体ぶりながら、タロウだけに聞こえるように小声で言うと、タロウは私の顔をガン見して両手を握った。『身体強化』を掛けたみたいで、タロウの顔が嬉しそうに緩む。
「うわっ、本当だ! アリス、痛くないよ!」
「でしょう? ふふ」
どれくらいの『身体強化』でお尻の痛みを感じないか、ダンジョンに着くまでの間に試した。私は大丈夫なんだけど、タロウのMPが少ないから、ここでMPを使い過ぎるとダンジョンで困るかもしれないからね。
結果、『身体強化E』程度の弱めの身体強化で十分な効果があったよ。
そして、<リッヒダンジョン>に到着。
私がまだダンジョンに慣れていないから、今回は10階にワープしないで、1階から進んで10階を目指すことになった。
ダンジョンの5階辺りから、3体のゴブリン(私達みたいにパーティーを組んでいるように見える)が出て来るようになり、それぞれが1体ずつ担当する。
テオとタロウが1体ずつ前で倒し、私は2人の後ろから3体目のゴブリンを魔法で引き寄せて倒そうとしたんだけど、魔物と離れていると魔法が届かなかったり、発動しなかったりする。
う~ん……自分の魔法が届く距離を、撃ちながら感覚で覚えるしかないかな。
テオとタロウの動きを邪魔しないように、弱い魔法で3体目のゴブリンの注意を引いて――タゲを取るってやつだね――こっちに向かって来た所を強い『風魔法』で止めを刺す。
何度か片手剣で倒そうと試したけど全然ダメで、魔法で倒す方が楽だった。私って魔法使い向きだなと思って、杖を出して撃つと魔法の威力が上がる……魔法の杖って凄いね。
途中、ゴブリンの中に杖を持つのが出て、何やら詠唱を始めたので慌ててゴブリンの口を目掛けて魔法を撃ったけど……そう言えば、ゴブリンメイジって言う魔法を使うゴブリンがいるって習ったな。
「テオ、タロウ、ゴブリンメイジは私が担当するね」
「おう! アリスに任せた」
「杖持ちのゴブリンだね。了解!」
テオは問題なく強いし、タロウも慣れた感じで余裕さえあるように見える。特に危ないこともなく、早い時間に10階のワープクリスタルに着いた。
換金額は前回より多くて、1日の店の売り上げより良かったりする……。次は10階からだから、今日より稼げそう……テオが冒険者に戻った理由が分かるな。
◇◇◇
今日は、テオとタロウがダンジョンに行かずに店番してくれているので、私は朝からポーションとサンドパンを大量に作っている。もう直ぐ冬休みが終わるから在庫を作らないとね。
「アリス、もう直ぐ学園だな」
「うん。テオ、学園が始まっても、月に1回はダンジョンに行きたいな」
少しだけど、魔法使いとしての動き方が分かって来た。間が空くと忘れそうだからね。
「そうだな。店をタロウに任せたら、俺が薬草を採りに行ける。店の定休日に3人でダンジョンへ行こうか」
あっ、やっぱりタロウに店番させるんだ。店の定休日に……ダンジョンは毎週じゃなくても良いんだけどな。
「テオ……俺、一人で店番なんて無理だよ」
お茶のコーナーがあるからね。タロウ一人だと、慣れるまで大変かも。
「タロウにも出来ると思うが……じゃあ、週末の闇の曜日も店を休みにしようか!」
「「えっ……」テオ、闇の曜日も定休日にするの?」
週末の、闇と光の曜日で店を2連休……。
「ああ、アリスの学園が始まったら、闇の曜日にタロウと薬草を採りに行って、光の曜日は3人でダンジョンに入ることにしよう」
「俺はそれが良い」
「テオ、店を連休にするのね。分かった」
この薬屋はテオの店だし……ハッキリ言うと、店をするよりダンジョンに入る方が稼げるのよね。
もう少し深い階層に行ってオークを狩るようになったら尚更で、強い魔物程、魔石のドロップ率が良くなるんだって……タロウがいるから既にドロップ率が良いのに、これ以上良くなるの? ん~、それはなさそう。
因みに、オークの魔石は銀貨5枚、オーク肉は銀貨2枚で買い取ってくれる。
タロウ一人で店番をしてもらうのはキツイだろうし、テオが店番をしてタロウに<大森林>へ薬草を採りに行ってもらうのは怖い。
何かあったら……あっ、私が冒険者登録した時、『自分1人で薬草を採りに行けるのに~、テオの過保護』って思ったけど、今ならテオが一緒に薬草を採りに行くって言った気持ちが分かるな。
「闇の曜日に1週間分の薬草を採ればいいのか……」
「そうだ。タロウ、薬草の在庫が増えたら、2日ともダンジョンに行くぞ!」
「2日とも!? 俺、薬草集めを頑張るよ!」
1週間分どころか、2人で薬草を集めたら2~3週間分は集められるんじゃないかな。タロウのアイテムバッグにも時間停止機能が付いているから、薬草を沢山採っても問題ないしね。
常連さんがいるから、店の入口に3の月から『定休日:闇と光の曜日』って紙を貼っておこう。
ガチャ、チリンチリン~
「いらっしゃいま……せ……?」
呼び鈴が聞こえたので、声を掛けながら店の入口を見たら、キラキラした銀色の髪に青い目……!
「こんにちは、アリス。ここの自家製ポーションを買いに来たんだ」
「へっ……リカルド様!?」
そこには、『風の貴公子』が立っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます