第66話 タロウのステータス

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 名前  タロウ

 年齢  13歳 

 HP  15/18

 MP   1/23

 攻撃力   B

 防御力   A

 速度    D

 知力    D

 幸運    A

 スキル

 ・短剣D  ・鑑定C ・身体強化A

 ・火魔法A ・風魔法A ・土魔法A ・水魔法C

 ・雷魔法D ・氷魔法D ・空間魔法C ・回復魔法F

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 わっ! 見えた……えっ、攻撃力が『B』で防御が『A』なんて凄い! スキルの数は私の方が多いけど……。


 紙を取り出して書き写す……MPが少な過ぎるな。


 MPが多い人は、使える魔法の種類が多いか、ランクの高い魔法が使えるって授業で習った。タロウは魔法の種類も多いし、ランクの高い魔法も持っているのに……MPが少ないのはどうして?


 あれ、生活魔法がないのは、魔法のない世界にいたからかな? もしかして、小さい頃から水を出す程度の生活魔法すら使っていなかったから、MPが増えなかったとか……あっ、テオとタロウが覗き込んできた。




「おっ、それがタロウのステータスか! 流石さすが、<迷い人>だな~。まだ13歳なのに、既にステータスも魔法スキルも高いな! ん!? 何だ、そのMPは? あ~、道理どうりで直ぐに息切れするはずだ……」


 そうだよね。いくら『火魔法』が『A』でも、このMPだと低ランクの『ファイヤー』数発しか使えないんじゃないかな。『風魔法』も『A』だから、最上位魔法の『トルネード』だって覚えられそうなのにね。あ~、知力が『D』だと覚えられないのかな?


「これが、おれの……」


「タロウ、明日も魔法の練習に<大森林>に行くぞ! 魔法を使えばMPが増えるはずだからな」


「うん!」


 それが良いね。生活魔法が使えないなら、森でスライム相手に『火魔法』を使ったら魔法にも慣れるしMPも増えると思う。


「ねえ、タロウ。森で魔法を使ってみてどうだった?」


「アリス、ドキドキして……たのしかったよ!」


 ふふ、タロウが嬉しそうに話す。


「ハハ! タロウは13歳だから、今すぐにでも冒険者ギルドに登録出来るが、もう少し魔法に慣れてからにしよう。ゆっくりでいい、焦る必要はないからな!」


「うん。おれ……うまく魔法を使えるようにがんばる」


「おう! それと、タロウ覚えておけ。街中で魔法を使ったらダメだ。ただし、自分の身が危なくなったら迷わず魔法を使え! 悪い奴には遠慮するな」


「悪いやつ……うん、わかった」


 冒険者ギルドに登録すれば、身分証代わりになる冒険者カードがもらえるから便利なのよね。カードを見せれば街の出入りは自由になるし、国内ならどこの街に行っても入門税を取られないんだって。


「あー、タロウ。お前、『鑑定』スキルを持っているから、やっぱり文字は覚えた方がいいぞ。宝の持ち腐れになるからな~、文字も俺が教えるからな!」


「文字を……」


 そっか~。『鑑定』を持っていたら、そのうち自分のステータスが見えるようになるからね。その時、文字を知らなかったら何が書いてあるのか分からない……それは勿体ないよね。


 ゆっくり覚えればいいと思ったら、早速、テオが紙とペンをタロウに渡している。


「タロウ、先ずは自分の名前を書けるようになろうか」


「うん!」


 テオは、私が書いたステータスの紙を見せながら文字の勉強を始めた。あぁ、最初に覚えるのはタロウのステータスなのね。



 ◇◇

 翌日から、テオとタロウは、午前中に<大森林>で魔法の練習をして、帰って来たら計算や文字の勉強しながら店を手伝ってくれる。


 タロウは、店を閉めてからも文字の勉強をして、たった数日で自分のステータスが読めて書けるようになったの。字はもう少し練習した方が良さそうだけど、凄いね~。


「タロウ、文字を覚えるが早いね。勉強が好きなの?」


「おれ……文字の勉強をしたことがないんだ。すんでいた村でも、文字がよめる大人は2~3人しかいなかったし……アリス、勉強っておもしろいよ! フフ」


 そっか~。笑顔で勉強が面白いって言えるなら直ぐに覚えそうだね。


 夕食の後も、テオはお酒を飲みながらタロウに文字を教えている……テオにお酒のつまみでも出そうかな。


「タロウ、今度、タロウの護身用に短剣を買いに行こうか」


「えっ! おれの!?」


 タロウの反応に、テオが嬉しそうに身体を乗り出して、短剣にはダガーやナイフがあると説明を始めた。


 タロウも目をキラキラさせて、嬉しそうにテオの話を聞き始める……あぁ~、勉強は終わりだね。私はもう寝ようかな。ふぁ~。



 ◇◇◇

 火の曜日、今日はテオとタロウは魔法の練習には行かないで、レオおじいちゃんが来るのを待っていた。


 ガチャ、チリンチリン~


「レオおじいちゃん、いらっしゃいませ~」

「レオ様、いらっしゃい!」


「うむ。テオ殿、今日は小さな客がおるのか? フォフォ、丁度良かった。今日はリアムにも菓子を持たされたんじゃ。アリス、茶を頼む」


「はい、直ぐに用意しますね」


 私が台所に行っている間に、テオがタロウをレオおじいちゃんに紹介したみたい。これから一緒に暮らすことになったと話しているのが聞こえる。アルバート様と同じで、タロウが<迷い人>だってことは話していないんだろうな。


 テオは、レオおじいちゃんは偉い貴族だから粗相のないように、ってタロウに話していたから、緊張しているみたい。


「ほお~、<大森林>で……。ふむ、周りにはアリスの従姉弟にするのか……フォフォ、姉弟だと言っても信じそうじゃな。ではタロウ、わしのことはレオおじいちゃんと呼ぶが良い」


 あっ、タロウにも呼ばせるんですね。ふふ。


「えっ、レオ……おじいちゃん? おれ、太ろうです……よ、よろしくお願いします」


 タロウが恥ずかしそうにレオおじいちゃんと呼んで、チョコンと頭を下げた。


「フォフォフォ、タロウ、よろしくのぉ」


 その後は、レオおじいちゃんが持って来てくれたお菓子を食べながら、テオがレオおじいちゃんに「レオ殿、子供の頃はどうやって魔法の練習をしたのですか?」と聞いている。


 タロウの魔法の練習の参考にするんだろうな~。タロウも魔法に興味があるから、目を輝かせてレオおじいちゃんの話を聞いている。ふふ。

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