第23 話 学園のススメ②
テオ、そんな言い方したら勘違いされるよ。多少というか、生活魔法にしたら強い程度で、属性魔法で言うと低レベルだと思う。魔物を攻撃するような強い魔法は試したことないけどね。
「ハア~、規格外だな……。しかし……、そうか……」
エリオット様が頭を抱えてブツブツ何か言っている。
「回復魔法と4属性が使える……聞いたことがない……」
「えっ、アリスは4属性も使えるんですか!? 凄い……、テオ殿は魔術師の家系……には見えないから、母親がそうなのか……いや、実はとか……」
3人が同時に話すから聞き取れないけど、絶対に勘違いしていると思う。
騎士団の中でも魔法を使える人は多いそうで、エリオット様は火魔法と風魔法が使えて、アルバート様は火魔法。ロペス様は、4属性を使えるけど得意なのは水魔法と風魔法だそうです。
「テオ殿、アリスは……特別なのだな」
「「凄いですね……」」
えっ、ロペス様も4属性を使えるじゃないですかと言うと、回復魔法も使えることが凄いって言われた。
「しかし……それだけ魔法を使えるなら、アリスの魔力量は多いのだろうな。やはり、<リッヒ王国学園>に入ることを勧める」
エリオット様が学園を勧める……でも、
「あの……私、12才になったら冒険者になるので、学園には行かないですよ」
「ああ、アリス、そうだったな」
うん。前に、テオに話したよね。
「アリスが冒険者になったら俺とパーティーを組むが、アリス……魔法の勉強をしてもいいと思うぞ」
「えっ、テオは賛成なの?」
「ああ。俺は魔法を……専門的なことは教えてやれんからな。学生でも冒険者になれるし、学園では魔法以外のことも教えてくれるぞ。確か、錬金術の授業もあるって聞いたことがある」
う~ん、錬金術の勉強はしたいかも。でも、貴族がいる学園は怖いよ。
エリオット様は、マルティネス様に相談して推薦状をもらうと言っている。私をそっちのけで、4人は店を閉めた後も話し込んでいた。
◇◇◇
火の曜日、レオおじいちゃんが来て、美味しそうにお茶を飲みながらニコニコして学園を勧めてきた。
「アリス、エリオットから話は聞いた。こんなに旨い回復魔法が効いた茶を淹れるんじゃから、<リッヒ王国学園>の魔術科へ行くと良いぞ。わしが、推薦状を書くからな。ズズズ……」
あっ……レオおじいちゃん、気付いていたんですね。
「レオおじいちゃん、私、12才になったら冒険者になるの。だから、学校は行かなくてもいいの」
「冒険者とは、何を言っておるんじゃ、危ないではないか。アリスは宮廷魔術師になって、わしと一緒に魔法の研究をすればいい」
ええ~~! 宮廷魔術師なんて無茶なことを言う……助けてもらおうとテオを見ると、腕を組んで何か考えている。
「アリス、冒険者のことは俺が教えてやれるが、魔法のことは教えてやれんからな。ただし、寮はダメだ! 俺が送り迎えするから、アリスは店から通うんだぞ」
この前の話で、学園には寮があって、庶民とほとんどの貴族が寮に入るって聞いたけど、
「えっ、寮に入らなくていいの?」
それなら気分的にまだ楽かも。テオが言うには、魔力が多いと魔力暴走させる人もいるらしく、私の魔力量も多いだろうから、制御の仕方を教えてもらった方が良いと言う……どうしよう。
「それにアリス、学園には錬金術の授業以外に、魔法陣や魔道具を作る授業もあるそうだ」
「えっ、魔道具を作る授業なんてあるんだ……」
それは面白そう。う~ん……、
しばらく考えて、<リッヒ王国学園>の年少科の試験を受けることにした。レオおじいちゃんとエリオット様が推薦状を書いてくれるそうです。
「アリス、学園を卒業したら宮廷魔術師じゃ! 楽しみじゃな~。アリスには、わしの助手をしてもらおうかの。フォフォフォ」
「ええ~、レオおじいちゃん、気が早いですよ」
まだ試験も受けていないのに……レオおじいちゃん、試験に合格しないと学園には行けないんですよ。
◇◇◇
試験の申し込みは、全てエリオット様が手配してくれた。そして、どんな試験があるのか、エリオット様とロペス様が教えてくれた。二人とも、魔術科の年少科に通ったそうです。
「アリス、学園で使うのは回復魔法と風魔法だけにしよう。回復魔法を使えるだけでも目立つのに、4属性もとなると……」
貴族が絡んで来るだろうから、生活魔法程度ならいいけど、なるべく使わないようにと言われた。
「それと、試験では、周りを見て魔法の威力を合わせるんだよ。抑え気味で良いからね。目立ってはダメだよ」
「エリオット様……威力を合わせるなんて、やったことないです」
エリオット様はむずかしいことを言う。風魔法なんて、洗った薬草を乾かす時と細かく切る時くらいしか使わないのに。
「えっ、アリスは、抑えないといけないぐらい魔力が強いの?」
「いえ、ロペス様、属性魔法は低レベルだと思います」
ロペス様に、『鑑定の儀』を受けてないから自分の魔力量もスキルも知らないと言うと、今からでも受けられるよと言われた。それは困るの……下を向いたら、エリオット様の声が聞こえた。
「アリス、『鑑定の儀』を受けなくても問題ないからね」
思わず顔を上げてエリオット様に「はい!」とうなずいた。分かってくれている人がいるのは嬉しいな。
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