エリオット・フィリップスのつぶやき
アルバートからの報告で、アリスが自家製ポーションとマジックポーションまで作ったと聞かされた。
テオ殿が、子供のアリスが作っていると知られると、アリスに危険が及ぶと思い黙っていたと……正しい判断だ。私も他言するつもりはない。
「そうだな、アリスが作っていることは口外しない。ロペスも肝に銘じておいてくれ」
「勿論です。しかし、アリスは凄いですね。回復魔法が使えて、マジックポーションまで作れるなんて」
「ああ、そうだな。さすが私の『女神様』だよ……」
2人は知らないが、アリスは聖魔法も使える。しかも無詠唱でだ……生活魔法程度なら無詠唱で発動するが、普通、強い魔法ほど詠唱が必要になるのに。
アリスの聖魔法は聖女以上で大聖女クラスだ。あの呪いの痣は……年々広がり痛みも酷くなっていた。放っておけば、命を落としていただろう。アリスは、私の命の恩人だ。
教会がアリスのことを知れば、聖女として囲い込もうとするだろう。本人が教会に行きたくない以上、何があっても守らなければ。
◇◇◇
王都から離れている間、アリスが無事でいるか心配になる。王都にいる時はアルバートやロペスを見回りにやれるが、討伐で王都から離れると何も出来ない。早くゴーレムの討伐を終わらせるしかないな。
ボワッ!! ヒュ――、ドバァ――ン!!
「エリオット、もっとしっかり『挑発』を入れぬか! アルバート、お前もじゃ!」
「マルティネス様……」
貴方が自重して……もう少し弱い魔法を撃って下されば、楽に倒せるのですよ。
「申し訳ありません、マルティネス様」
アルバート、お前が謝ることはない。
◇◇
山の中腹までは順調に来たが、一気に討伐部隊の進みが遅くなった。マジックポーションが底をついたようで、MPが無くなった宮廷魔術師が前線から後ろへ下がっていく。
ヘンリー隊長と現状を考慮して、早めに野営の指示を出したのだが、アイアンゴーレムが現れたと報告が来た。魔術師達のMPが残っていればいいんだが……。
マルティネス様が来られて、隊長に撤退することを勧めてきた。やはり、魔術師達のMPがないらしい。
アルバートが、マルティネス様に試して欲しいと、アリスの作ったマジックポーションを出した。やはり、アリスの薬は効果が良過ぎたようで、マルティネス様とリアム殿が騒いで、錬金術師は誰かとアルバートに詰め寄っている……気を逸らさないと。
「そんなことより、マルティネス様。MPが回復したのでしたら、さっさとアイアンゴーレムを倒しに行きましょう」
アルバートの顔に『エリオット様、ありがとうございます』の文字が浮かんで見える。アルバート、もう少し隠せ……分かりやすいぞ。
◇◇◇
ゴーレムの討伐もやっと終わった。アリスは無事だろうか……。
「副隊長、どうかされましたか? 気になることでも?」
顔に出ていたのか、アルバートに気遣われるとは……フッ、私もまだまだだな。
「ああ、アルバート。アリスの錬金術の腕が世間に知られて、攫われないか心配なのだよ……魔法も使えるからね」
いずれ、アリスのことは知られるだろう。いつまでも隠し続けることなど出来ないと考えるべきだ。回復魔法は仕方ないが、アリスに聖魔法は使わないように言い聞かせないと……いっそのこと、人の目が多い学園に通ってもらう方が安全かも知れない。貴族は子供でも、互いの言動を注意深く見るからな。
◇◇◇
王都に戻り、溜まった書類や報告書を書き上げて、『テオの薬屋』へ行った。アリスの顔を見たら一安心だ。さて、アリスに学園を勧めようと思うのだが、先ずはテオ殿を説得しないといけないな。
「テオ殿、きっとアリスの魔力は多いのだろう。それが作用して良質の薬が作られるんだと思う。もし、アリスの能力を知られたら……テオ殿の言う通り、アリスを狙う者が出て来るかも知れない」
テオ殿とアリスに、<リッヒ王国学園>の年少科を受けるように勧めた。最初、反応が悪かったテオ殿が、腕を組んでジッとこちらの話を聞いた後、考えるように口を開いた。
「……この際だから言っておくが、アリスは、多少だが4属性魔法も使えるぞ」
「「「なっ!」」何だって、テオ殿……」
爆弾発言だ! 4属性・回復魔法・聖魔法が使える者がいるとは……今まで聞いたことが無い。これはマズイ……聖魔法だけではなく、4属性も隠さないと……アリスが使える魔法は、属性魔法が1つと回復魔法にしてもらおうか。
アリスは12歳になったら冒険者になると言っているが、余計に危ないんじゃないか。ん? アリスが冒険者に登録したら、テオ殿がパーティーを組むと? それなら大丈夫か。
取りあえず、マルティネス様に推薦状を書いて頂き、アリスに学園へ入るように勧めてもらう。それと、学園では……ロペスに手を貸してもらおうか。確か、ロペスの妹がアリスと同い年だったはずだ。
「ロペス、ロペスの妹が確かアリスと同い年だと言っていたな?」
「はい、副隊長」
ロペスのラミレス男爵家は、魔力の多い家系だ。ロペスも優れた魔法の使い手だから、妹もきっと……。
「ロペス、妹殿に<リッヒ王国学園>に入学してもらうことは出来ないかな? アリスを見守って欲しいのだ。費用は私が出す」
「妹のソフィアは、学園の年少科に行けるのでしたら喜んで引き受けると思います」
ラミレス男爵に書状を送り、アルバートとロペスから話をしてもらうことになった。私は先に、マルティネス様の所に行って推薦状を書いていただく。
アリスが学園に入ったら、少しは安心出来るのだが、テオ殿が寮生活を反対する。寮生活の方が安全なのだが……。
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