第14話 偉いおじいちゃんの仕事
近頃、偉いおじいちゃんがお茶に合うお菓子を持って来てくれて、一緒にお茶しています。
「アリス、わしの事は『レオおじいちゃん』と呼んでくれんか?」
「えっ、良いんですか? えっと、レオおじいちゃん……」
「フォフォフォ、嬉しいのぉ。アリス、わしは、ここに来ると元気になるんじゃよ。こんなに旨い茶を淹れる者はおらんからな」
ズズズ……
「ふふ、ありがとうございます」
レオおじいちゃんの仕事は忙しいのかな? お茶には安い紅茶の葉を使っているけど、水に魔法を掛けているから、疲れていたら元気になったと感じるかもね。
レオおじいちゃんは、いつも1時間ほどゆっくりして帰って行くんだけど、時々、テオも一緒にお茶を飲むの。
「テオ殿、アリスのような可愛い娘がいて良いのお~。わしの孫は、男しかおらんのじゃ。可愛くないんじゃよ……」
男の子でもかわいいんじゃないかな~。もう、大きくなったのかな?
「レオ様、その孫が、可愛いひ孫を見せてくれるかも知れませんよ? アリスより可愛い子は、なかなか見ないですけどね~」
テオ~、腕を組んでドヤ顔しないで……親バカすぎる。
「ふん! 孫など当てにならんわ。可愛いアリスのお茶が飲めれば十分じゃ。本当は毎日お茶を飲みに来たいんじゃが、うるさいヤツがおるから火の曜日しか来られんのじゃ」
アルバート様に聞いたけど、レオおじいちゃんはレオナルド・マルティネス公爵様と言って、現役の偉い宮廷魔術師なんだって。普段は、補佐の人がそばにいて1人で出歩くことなんてないそうです……もしかして、黙って来ているのかな?
◇◇◇
朝早く、テオがダンジョンに行く準備をしている。ダンジョンに行く日だけは、起きるのが早いのよね~。ふふ。
「アリス、ダンジョンに行ってくる。今回は少し深く潜るから、戻って来るのは4~5日後になる。戸締りをしっかりするんだぞ!」
「分かった。テオ、気を付けてね」
テオはダンジョンに入る時、いつも1日多く日数を言うの。3~4日と言っても3日目には帰って来るから、今回は4~5日だから……4日後に帰って来るんだね。
テオを見送った後は、作業場で薬やポーションを作って、いつも通りに店を開けた。薬を買いに来るお客さんと、お茶コーナーのお客さんで忙しい。だいぶ慣れたけどね。閉店後はサンドパンを作るので、毎日があっという間に終わるの。
今日で、テオがダンジョンに行って4日目。店を閉めて夜になっても帰って来ない。テオは4~5日で帰るって言ったから、今日帰って来るはずなのに……寝ている間に帰って来るかな?
5日目の朝、テオの部屋を覗いたけど、まだ帰ってない……おかしい。
いつも通り店を開けたけど……気になって仕方がない。
「ダンジョンで何かあったんだ。どうしよう……」
私だけだと、ダンジョンに様子を見に行くどころか、身分証を持っていないから街から出ることも出来ない。門の警備兵さんに止められてしまう。
『何かあったら、私が困るからね』
そうだ! エリオット様に相談してみよう。お店を閉めて、エリオット様のお屋敷に向かう。
速足だったのが、いつの間にか走って……息を切らせながら、いつもの門番さんに、テオがダンジョンから帰って来ないからエリオット様に相談したいと伝えた。
「お嬢ちゃん、ちょっと待ってな」
「はい……」
屋敷へ向かった門番さんが、執事のトーマスさんと一緒に戻って来た。
「アリス様、エリオット様へ使いを出しました。中でお待ち下さい」
「トーマスさん、ありがとうございます」
応接室に通されて座っていたけど落ち着かない……メイドのステラさんが、お茶を持って来てくれた。
「アリス様、どうされました?」
「ステラさん。テオが……ダンジョンから帰って来ないんです。きっと、ダンジョンで何かあって……様子を見に行きたいけど、私一人だと門から出してもらえないんです……」
話していると泣きそうになる。今すぐテオを探しに行きたいのに……。
「まあ、テオ先生が……心配ですね」
「うっ……」
ステラさんの言葉に声が詰まって、うなずくことしか出来なかった。
しばらくすると、ドタバタと足音が聞こえて来た。ドアが開く音と共に振り向くと、エリオット様とアルバート様が入って来た。
「アリス! 大丈夫かい?」
エリオット様の顔を見ると、思わず立ち上がった。
「エリオット様! テオが帰って来ないんです。ダンジョンで何かあったのかも……私、テオを探しにダンジョンへ行きたいんです。でも……子供だから門から出してもらえない……エリオット様、お願いです! 誰かに……門を出るまで付き添って欲しいんです」
門を出るまででいいから……お願いします。
「アリス、落ち着いて。今、ギルドに何か情報がないか、ロペスに調べに行かせたから、少しだけ待ってくれないか?」
ロペス様が調べてくれている? エリオット様が優しく目元を拭いてくれた。
「はい、エリオット様……」
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