49話 仙人②
「ふぉふぉ、そうですな。……まあそれぞれのクスリについて説明することに意味があるのか分かりませんが、一応させていだだきましょうかのう……まずは葉っぱ、これは皆さん知っておられるとは思いますが大麻・マリファナですわな。世界各地で愛好されており歴史的にも最も古いものでございますねぇ。個人的には大麻をドラッグと同類に扱うことには違和感を感じるのですが……まぁ良いでしょう、ふぉふぉふぉ。……あと日本でもう一つメジャーなものはやはりシャブと呼ばれる覚醒剤でしょうなぁ。大麻がダウナー系といってリラックスするのに対して、シャブはアッパー系ですわ。神経が研ぎ澄まされ集中力が断然発揮される、勤勉な国民性も影響して日本では違法ドラッグの代名詞と言えばシャブ、というくらいの地位を獲得しておりますわい」
「いや、国民性なんか関係あるんかよ!」
爺さんの軽いボケだと思って俺はツッコミを入れたのだが、爺さんの表情を見るに、別に意図的にボケを入れたというわけでもなさそうだった。
「むむ、新入りさん……。先程丸本さんが言っていたように、エロ目的にドラッグを使う人間は確かに多いんじゃがな……中には本当に作業や仕事に集中するために使用する人もいるんじゃよ。とある官僚の方が膨大な残業に対処するためにシャブを用いて捕まったという事例も最近あったのう……」
「マジかよ!……笑えねえな」
まったく、どうなってんだ日本社会!と、こんなやり切れない話を聞いた時くらいは言ってみたくなった。
「チャリとかコークと言われるものはコカインですな。方向性としてはシャブに似たアッパー系なのじゃが、シャブよりは上品な効き方じゃのう」
「上品とはどういうことですか、仙人?」
謙太が小首を傾げて尋ねた。……まったく!この男はこんな時でもあざとい仕草をしやがる!
「ふぅむ、説明するのが難しいのじゃがな、シャブほど雑味がないといいますかのぅ……効いている時間も数十分と非常に短いものじゃし、欧米ではさっとキメるのが粋な大人のライフスタイルらしいがのう……まあコストパフォーマンスの良いものではないしの、日本ではあまり人気がないようじゃのう」
「ほーん、色々あるんだな」
クスリなんて皆同じような物だとばかり思っていたが、色々違いがあるようだ。
「紙はLSDの隠語ですじゃ。……ワシはあまり好みではなかったんじゃが、特に視覚を変容させる幻覚剤と言われておりましての。一昔前に合法として日本でも流行ったキノコに似た効きじゃのう。……身体的な害はあまりないとも言われておるんじゃが、幻覚を見た影響で屋上から飛び降りたりといった事故も起こって、それで規制が進んだようですのう」
「……キノコ、と言うとマジックマッシュルームというやつですか?」
柳沢が陰気ににやりと微笑んだ。
なぜ柳沢が微笑んだのかは理解不能だ。あるいは古いAVでそういったシチュエーションがあったか、あるいはまたキノコをキメたヤツら用のAVがあったことを思い出しでもしたのかもしれない。
爺さんもニコリとうなずく。柳沢の微笑の意図がはっきり伝わっているとは思えないが、まあそれでもこの二人は良いのだろう。
「ヘロインは『ドラッグの王様』とも呼ばれており、生きている内に経験できる総量を超えた快楽を味わうことが出来る……などとも言われております。もちろんその反動も凄まじいもので、薬効が抜けた際には風が吹いただけで全身がバラバラになるほどの痛みを感じるそうです」
「そうです……って爺さん経験したんじゃねえのかよ?」
慎太郎の疑問はもっともだった。
「むむ、たしかにバングラで経験したのはヘロインで間違いないのじゃがな……丸二日ベッドの上で沈んでおっただけじゃった。ベッドの上で
「ほーう、そんなヤバイもんが本当に実在しているんだな」
俺は少し怖くなり、ブルブルと意図的に身体を振るった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます