48話 仙人①
「ふぉふぉふぉ、皆さん実に有意義なお話をして下さいましたな。……実は、お恥ずかしながらこのジジイも若い頃は悪さをしておりましてな。丸本さんのように最近の合法ドラッグなどの経験は無いのですが……違法の方に少々手を出しておりました」
そう言うと爺さんは恥ずかしそうに少し笑った。今までの温和な微笑とは少し違う、本音が少しだけ透けた笑い方に思えた。
「違法……って違法薬物ってことでっか!?」
長田が素っ頓狂な声を上げた。
他のヤツらも驚いた表情で爺さんを見つめていたから、恐らく爺さんの告白は初めてのものだったのだろう。
俺もあんな温和な爺さんが……と驚く気持ちもあったが、それを言えば爺さんがこの場所に居ること自体がもう場違いな訳で、暴力行為などで捕まったというよりはクスリで捕まった、という方が説得力があるのは確かだった(むろん今収監されている罪状がクスリなのか正確なところは分からないが)。
「……違法というと何を使われたのですか?」
丸本が興味深そうに尋ねた。
合法のドラッグについて詳しいということは、丸本は違法な物にも(実際には手を出していないにしろ)多少は知識があるのだろう。
「ふぉふぉ、まあ一通りは経験しましたよ。……葉っぱ、シャブ、玉、紙、チャリ、ヘロ」
「……本当ですか?ヘロインなんて日本には入らない、と聞いていますが」
丸本が怪訝な表情で尋ねた。
「ふぉふぉ、ジジイは若い頃アジア圏を放浪しておりましてな。その時にそうした悪い遊びを覚えてしまったのですわ。……あれは、バングラデシュでしたかな。地元の怪しい男に誘われて半信半疑で買ったものだったのですがね、あの効き方は確かにヘロインでした。……もう二度とやろうとも思いませんが」
「なあ、ちょっと待ってくれよ!クスリってそんなに色々あるのかよ?ヘロインなんて聞いたこともないぜ?あと何だよ、紙だとか玉だとかは?」
慎太郎が噛みついたが、これは俺にとっても実に有難かった。俺も違法薬物についての隠語はまるで理解出来なかったからだ。
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