15話 長田⑤
「いや、問題は大アリやった!ジムに入って数年経っていたワシは、その頃にはインストラクターになっていたからな。……とにかく当時のワシは調子に乗っとった。アマチュアの小さなボディビル大会に出て優勝したりもしてな、それが一部の女にはウケてさらに女に手を出す。モテることが筋トレのさらなるモチベーションにもなる……っちゅう調子乗りの悪循環や」
「しかし、そんなに女の子をとっかえひっかえで、よく身体が保ったね?」
心底感心した……という様子で謙太が尋ねた。確かに細身のこの男と、長田では明らかに精力に差がありそうだ。
「そこなんですわ!筋トレをしてそれに見合う栄養……つまりタンパク質を摂取しているとテストステロンの影響からか性欲がめっちゃ上がるんですわ。特にスクワットとか下半身を鍛えるとその効果は著しいものですわ」
「え、そうなんすか!?っていうか筋トレって下半身も鍛えるんだ?」
慎太郎が声を張り上げた。
「ああ、そうやな。……確かに筋トレっちゅうたら、太い腕、分厚い胸板、6パックの腹筋みたいなもんを想像する連中が多いやろな。でも、それは素人考えや。人間の身体は下半身に7割の筋肉が集中しとる。見栄えのことばかり意識して上半身しか鍛えない人間なんかは、ワシに言わせればトレーニーやないで」
「へえ~、良いこと聞いた!つまり下半身を鍛えると……って言うと、何かいやらしいな……脚とかの筋肉を鍛えると、ホルモンがバーッと出て性欲が増すってことだね?」
謙太が目を輝かせて長田に確認した。
「簡単に言えばそういうことですわ。タンパク質はその分取らなきゃならんですがね」
何だかんだ言っても、長田はジムでインストラクターを務めていたほどだからそういった理論等にも詳しいのだろう。
「……でまあ、そんな感じでジムの女性会員を中心に手を出しまくっとったワシやがな、ある時何気ない女性会員同士の会話からワシの素行が全部バレてな……まあそこでお仕舞よ。それを機に強制的にジムを辞めさせられたわ」
そう言うと自嘲気味に長田は笑った。
「まあいかにも調子に乗った若い時分の過ちって感じだな……そっからどうなったんだよ?」
何だかんだ長田の話にも俺は興味を持ってしまっていた。
続く長田の言葉はまたしても意外なものだった。
「……実はな、その頃になるとワシはもう女に飽き飽きしてきとったんや」
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