第6記 面接対策

 面接の修行は一ヶ月後からポツポツと始まっていった。

 そもそも面接以前に僕はマナーがなっておらず、その最低限のマナーを習得するために時間が割かれた。

 マナーを覚えながら、対人との話し方などを学んでいく。さらには、秘密を抱えながら何事もないように話す技術。ついには、まるでスパイのような技術まで学んでいった。


「これぐらいできればまあ及第点だろうな。ま、もう修行する時間なんてないけどな」


 修行は終わった。

 試験はすぐ明日だった。ここ一週間は体力を温存させるようなものと、復習のようなものでありどこかおかしいなと思いつついたが、まさか試験がすぐそこに迫っているなどとは思いもしなかった。

 思わず「はやく言ってください」と異議ありと言うが「悪い悪い」と言って頭を掻いている彼を見て反省してないなと思った。


 試験当日。僕はカミヤに導かれて山を下った。

 どこか不気味な汚れた町を横切っていく。

 居心地が悪い。

「言ってなかったが、蒼の国の下町はこんなもんよ。裕福な生活ができんのは六割。残り四割は悲惨な人生なのよ」

 ボロボロの服を着ている少女がゴミ箱を漁っている。ガリガリの男女がそこに横たわっている。

 ようやくそこを抜けると、汚れた町とはうってかわった町が広がっていた。さっきの町と比べるとどうしようもなく豪勢に見える。だが何かを守るためなのか周りに張り巡らされた壁がどこか冷たく感じさせる。


「俺ァ、用事があるからここでお別れだな。会場、終わった後の集合場所、全てこの紙に書かれとるからな。じゃあ、また後でな」


 カミヤとはこの賑やかな町で別れた。

 地図を開いて目的地に向かって人混みを掻き分けていった。


 そして、人混みの中を抜け、そこにあったモニュメントの上に腰を降ろして地図を開いた。

 そこであることに気づいた。

 行く方向間違えた。

 迷わない目算で時間配分されていることに気づいた。本当にまずい状況だった。


「ヤバい。道間違えたァ!」


 タイムリミットは残り数分どころだ。どうする僕。どうすればいい。


「ねぇ。そこのお兄さん。教えて欲しいことがあります」


 可愛いらしい女の子だった。ビビッドな服を着こなしている小さな子。

「あたし、迷子なの。ここまでどう行けばいいですか」

 ごめん、僕もまた迷子なんだ。

 成り行きで彼女の示した地図を見ると、僕の行くべき目的地と同じだった。


「ごめん。僕も道に迷ってて、同じくそこに用があるんだ」


 お互い顔を合わせ、無言が続いた。

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晴天の間で ~脳あるスパイは爪隠す 言霊隠し~ ふるなる @nal198

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