第5記 筆記対策

 修行開始七日目頃から実技の修行にも余裕が出始めていたので、その日から筆記の修行もすることになった。

 筆記の修行といっても実際は単なるカミヤの授業に等しい。

 黒板を用意しており、それらしい雰囲気の中で授業を受けていく。


「では、言霊学から始める。まずは言霊についてだ。これを知らなければ言霊学は始まらない」


 人の口のようなものと「言霊」という文字が黒板の隅っこに書かれる。その後、黒板にチョークで三つに分けていく。


「言霊は三種類に分けられる。放った言霊の状態によって分けられている。一つ目は変身。二つ目は具現化。三つ目は呪言だな」


 変身はその名の通り何かに変身する言霊である。言葉を放ち、その言葉の生き物に変身する。例えば、

「変身とはこういうことだ。見てろよ『カラス』」

 カミヤは真っ黒いカラスに変身し、部屋の周りを飛び回った。カーカーという鳴き声が部屋中に響いていく。すぐに元の姿へと戻った。

「こういう風に何かに変身する。主に、動物など生物に関する言葉だ」

 生物に関する言霊を放てば、その生物に変身するのである。


 次に具現化とは、何かを召喚する異能力である。言葉を放ち、その言葉のモノを具現化しその場に現せる。例えば、

「次は具現化か。『かんざし』」

 机の上にかんざしが現れた。それは紛れもなく本物である。

「こういう、召喚だな。主に、無機物や食材などに関する言葉だな」

 無機物や食材などの言葉を放てば、それを具現化し召喚することができる。


 最後に呪言とは、言葉通りに働かせる超能力である。言葉通りにさせる最も強力な言霊であり、相当な体力を使うものでもある。例えば、

「最後に呪言。これはあんちゃんも見てたろ。『軽くなれ』と言って、その通りにアンタは軽くなった。これが呪言だ」

 その一言で常識を凌駕する状況に陥させる。

「まあ、相当パワーを使う強力な言霊だ。出来ないことも多いから、それは試して見るしかできねぇ」

 例え、死ねと言っても実際にそれを成功させることは無理に近い。あまりにも強大すぎる言霊は失敗に終わる。失敗しやすいのが呪言である。


 何の言霊が何の種類に入るのか。

 その呪言は発動可能かどうか。さらに、それはどれ程の体力を必要とするのか。

 言霊学は単純にして結構根深く難しかった。

 他にも試験には現代文、歴史、数学などの教科勉強も必要となる。僕は専門書で勉強しながら、分からない所はカミヤに聞いていく。こうやって筆記対策をしていた。

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