第4記 実技対策

「蒼戦士になるためにはまずは蒼戦資格というものが必要だ。そのための試験は毎年開かれるが多くの者が落っこちる難題試験だな」


 リビングで脚を組んで座りながら、丁寧に話しかけてきている。鋭い眼光が僕を捉えている。


「試験は二回に分けられる。一回目は筆記と実技。二回目は面接と実技。どれも疎かにできんからな、ハードに教えてくぜ」


 まず僕は外に出て限界まで山奥を走らされた。小休憩を入れた後は縄跳び。さらに休憩を挟んでランニング。それを繰り返して体力を付けていく。

 カミヤはニヤッと平気な顔で「まだまだ元気出さんかい」と痛む横腹をつついてくる。


「アンタ、体力ねぇなー。走るのも遅いし、体力は続かないし、まるで女の子みたいだな」


 高笑いして山奥の中に笑い声を響かせていくカミヤ。僕の心は傷ついていった。

 しかし、横腹が痛い。動こうとするとタイキックを受けたような痛みに襲われる。


「だがまぁ、これが今の限界だな。ということで、もう一度走り込みから繰り返すぞ」


 何を言っているのだろうか。もう疲れて動けないのだから、休みか終わりだろうと思う。本心から軽蔑的な瞳で彼を見た。


「じゃあ、おっぱじめるか。『回復せよ』」


 その言霊が僕の身体の疲労を消し飛ばした。

 今となってはカミヤが走り込みさせようとしたのも理由は分からなくもない。今はとても走りたくはないので分かりたくはなかった。

 何度も限界まで修行し、さらに限界突破させて修行。回復。再び修行の繰り返し。それをこの日だけでなく四日間も続けた。


「じゃあ、今度は言霊の修行じゃな」


 五日目でようやく新たな修行に踏み出した。それは一本の木を敵に見立てて攻撃するというもの。『せ』から始まる言霊を使ってそれを倒そうと思うが、『せ』から始まる戦いに有用そうな言葉が思いつかない。

 その日から試行錯誤しながら修行を繰り返していき、二ヶ月後に僕は僕なりの戦い方を身につけた。


 武器は僕にしか使えない特別な武器だ。元蒼戦士のカミヤのツテで価値の高い武器を寄越して貰ったらしい。

 少し重めの剣。だが、それは単なる剣ではなく中に数々の素材が入っているカラクリの剣である。他人にとってはそれを剣としてしか使えないが、僕が使えば他の武器として使うことができる。

 なぜか僕は修行が楽しくなっていた。

 山も木の揺れる音を鳴らしながら笑っていた。

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