スポーツの秋という罠

「ほえ?どういう状況?」


バッセンの隣に、フットサルコートがあって、その隣にバスケコートがある。


わたし、亜香里は枯葉舞い散るフットサルコートのベンチにに座っていて、ボア付きの茶色のコートを着ながら、水色のマフラーまで巻いて防寒対策は万全。下はなぜか制服スカートなんだけど、寒くはない。これくらいの気温で寒いって言ってたら、真冬になったら亀みたいにコタツから出ない気がする。


さっきまで寝ていたのにいつのまにかおてんと様は斜め上の頂上へ。


・・・こんな状況作り出すのはやっぱり作者かなぁ?


「ほらっ!どうしたっ!鈍ちんだぁっ!」


「だ、・・・か、らぁっ、ツーメンなんて無理だべさ!無理無理無理無理!!!」


後ろを振り返ると、お姉と作者がバスケをしていた。それもツーメン。


バスケは人数が少ないほど練習がキツくなる。だって5人いれば少しサボってもいいけど、2人だけだったらサボれないから。


お姉はいつも通り手加減無し・・・とまではいかなくて、流石に少し合わせてあげているようだけど。


「どうしたどうしたぁっ!!あっ、もしこのシュート外したらお酒禁止でーす!」


「んな、こといわれてぇもぉ・・・」


ヘロヘロになっている作者。外側をずっとグルグル回るようにして作者が走ってるから、内側でボールを捌いてるお姉は楽をしてる。


余談だけど、作者は何か自分自身に変化がある時、決まって高校時代の地獄のスリーメンをしている夢を見るらしい。


ボールを落とさないで必ずシュート決めて二往復するの鬼だよね。


間話休題。


もはや昼間でも酒を呑むんじゃないかと噂の作者が運動だなんて、どういう風の吹き回しだろう。


早いけどそろそろ作者が限界かな、と思って、わたしもバスケコートに移動しようと思った。多分、わたしが来てるの知らないよね。作者が無意識に呼んでるのかな?


ドタッと作者が大の字になって横たわる。


風が吹いて、空に枯葉が吸い上げられていく様を見ながら、わたしは近づいて行った。


「作者。お疲れ」


「・・・・・・おう。亜香里か。パンツ見えるぞ」


「眩しくて見えてないに一票」


「へっ、言ってろ」


「亜香里も来てたんだ。何で制服?ま、いいけど。望み通り、出し切らせてあげたよー」


「さんきゅーだな。・・・息が苦しいのに比べたら、俺の悩みって小さいのな」


「悟らせた!」


「わからせた!」


「わからせられてはいねーよ!」


「よっと」


わたしもごろんと横になってみた。お姉は白い試合用のユニフォームだったから、上にジャージを羽織ってごろん。3人で空を見つめていた。透き通る青に、赤や茶色の葉っぱが混じっていく。葉っぱ達がオレンジ色に照らされて、冷たい風が通り過ぎる。


「あのね、わたしたちはわたしたちでワイワイしてるけど、大人のことって見ていたくなくても見ちゃうの」


「いきなり唐突だな」


「わたしら子供が大人を見ないようにしてるのは、大人たちが嘘ついたり苦しそうにしてるのを見たくないからだよ」


「ふーん。おまえらはそんな感じなのか」


「亜香里、それって家族の話でしょ?」


「どっちにも取れるよ」


「それは一般論じゃ無い?うちだったら、誰か一人調子悪かったらすぐわかるし、そこは大人とか子供とか関係ないと思うなぁ」


お姉にしては鋭い指摘だ。うちは大人も子供も関係ない。その人個人を見るから、年相応じゃなくたって、例えばお父さんが情けないことを言ったって、それは個性なんだ。


作者の家族がどういうものかわからないから、あくまで普通の家族の例を挙げてみたんだけど・・・多様性の社会だから、当てはまらないのかもしれない。


返答を静かに待っていると、作者が口を開いた。


「じゃあ、両方の意見をまとめると、普通を求めすぎないで、自分たちなりの幸せを求めたほうがいいってことか?」


どんな気持ちで言葉が出てきたのか、わたしは想像がつかない。


全然言いたいことがわからない。足りない言葉は疑問だらけになる。・・・でもこれが精一杯なんだろうね。作者が納得してるなら、いいのかな?


顔を覗いてみると、楽しそうに笑ってた。


「実は食欲の秋って言うか、なめろう美味いよなめろう!」


「あ!この人この後絶対呑む気だ!お姉、あと10往復ツーメンお願い!」


「かしこまりぃっ!」


「嫌だああああああああああああっ!」


あなたがそこに生きてるなら、きっとずっと、誰かにとっての幸せが続いていくよ。


あなたに大切な人がいるなら、それを忘れないでね。

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うちの子女子娯楽〜しゃべっちゃいなよ とろにか @adgjmp2010

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