09話.[お前はやめてよ]

「花を使うなんて卑怯だよ」

「お前も花の前では無理だから今日にしたんだろ」


 もう来なければいいと思う。

 俺は俺で岬にはっきりと言った。

 花があそこまで頑張ってくれたのだ、断ることなんかできない。

 同情じゃない、だって一緒にいたら滅茶苦茶楽しかったからな。

 10時頃からとはいえ、夕方までいられたのは花が相手だからではないだろうか。


「……お前はやめてよ」

「……確かに昨日のは花に任せっきりで情けなかったと思っているぞ」

「いつの間にか花が凄く成長したんだなって思ってさ」

「俺もだ、恋した少女特有の強さなのかもしれないな」


 この後会うことになっているということをちゃんと説明しておいた。

 こそこそとする必要はない。

 花は俺を求め、俺も受け入れ、求め始めたのだから。

 異性といるのは確かに大変で落ち着かなかったが……って、別にいいか。


「隆也……この前はごめん」

「いや、俺も悪かった、これまで散々迷惑をかけてきて」

「じゃ、仲直り……してくれる?」

「ああ、ただ、あんまり駄目とか言ってくれなければもっといいけどな」

「わ、分かった、頑張ってみるよ」


 頑張らなければできないのかよ。

 いいか、急に褒めてきても気持ちが悪いからな。

 無理やり手を握って仲直りだと言って。


「帰るか」

「うん、帰ろう」


 久しぶりにふたりで帰ったのだった。

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