声かけ

 集中している、邪魔をしては駄目だな。


「そういえば、お前らは何でここに居るんだ?」

「みんなが何も言わずにいなくなって寂しかっったから、闇命君の気配を辿ってきた」

「寂しかったから?」

「俺達をないがしろにしないで、寂しい」


 せめて何かを言ってから居なくなってよ。不安にもなるからさ。


「…………こっちの方が年相応に見えるな」

「何と比べてるの」

「なんでもない」


 もしかして今、俺馬鹿にされた?



 ――――――――シュッ



「「「あ」」」

『うるさい黙れ』

「「「はい」」」


 今、本気の怒りが闇命君から放たれたから、琴葉さんですら何も言えず頷いていた。怖かったもんなぁ、背筋が凍ったよ。


 闇命君が黙って蝋燭を琴葉さんに突きつけ火付けを要求。再度、集中し始めた。

 今のようなことを今まで繰り返し行ってきたんだろうなぁ。


 どうしようかな、闇命君に伝えたい事があるんだけど……。これって、邪魔したら殺されるのかな。でもなぁ……。



 ――――――――シュッ



「ん?」


 あれ、さっきより早い。


『話したい事って何?』

「あ、もしかして聞こえちゃった?」

『早く答えて』

「はい」


 いらだっているのか何なのか。早く話そう。


「安倍晴明と話す事が出来たんだ」

『へぇ、許してくれたんだ』

「みたいだよ」

『それで、何を話したの?』


 周りからの視線が痛い、詳しく話すから待っていてください。


「今回の件、蘆屋道満は他の陰陽寮を巻き込んでいるって言っていた。だから、俺達も他の陰陽寮を巻き込んでいかないと駄目かもしれない」

『どこに声をかけるつもり?』

煌家かがやけと氷鬼家には手紙を出して協力していただけないか相談。水仙家と漆家は確実に力を貸してくれます──よね?」


 隣に立つ二人に目を向け聞くと、目を逸らしながらも頷いてくれた。何で目を逸らしたのさ、普通に聞いただけなのに。


「煌家とも繋がりがあったんだな、それに関しては初耳だ」

「繋がりがあるのは漆家で、俺達は会ったことすらないよ。漆家は琴葉さんが協力を要請してくれればどうにかなると思うし、そこから煌家かがやけに声をかける事が出来ればいいなと思って」


 靖弥は俺達の動きを蘆屋道満の命令により調べていたんだろうな。だから、接点がないはずなのにと疑問に思ったわけか。


『他に、相手に回ると厄介なのは屍鬼家しきけ桜火家おうかけかな。屍鬼家は確か、元々蘆屋道満の配下についていた寮だったはず。敵にいるのは確実と考えてよさそう。問題は桜火家かもしれないね』

「桜火も落ちてそうな気がするねぇ。代替わりしたばかりで、今は不安定な状態。付け込まれれば簡単に落ち。今回の陰陽頭は気弱だからな」


 琴葉さん、詳しいなぁ。闇命君もすぐに陰陽寮の名前が出るなんて。頭の中に全ての陰陽寮の名前が入っているの? さすがにすごすぎない?


「安倍家は駄目なのですか? 一番声かけやすいのでは?」

『いや、絶縁されているも当然だから一番声をかけにくい、というか、かけたくない』


 だよね、やっぱりだよね。でも、正直安倍家には協力を仰ぎたい。だめもとでも手紙は出したい。


「ですが、陰陽寮の中で安部家は最上位、蘆屋道満に手を貸す事はないにしろ、実力的には頼りになるかと思います。なぜ絶縁されたのかはわかりませんが、だめもとでも手紙を出してみた方がいいと思いますよ。陰陽寮全体に影響を与える事態に発展してしまう可能性がありますし」


 弥来さんの言う通り、今回の事態は陰陽寮全体に関わる事態になりかねない。今回の事で手を貸さず、仮に俺達が敗北してしまったら、今生き残っている陰陽寮がどうなるか予想が出来ない。

 全滅させられるか、配下につくように言われるか。どちらにしろ、陰陽寮の未来は無くなる。


 今の事態を安倍家は知っているのだろうか。知っていそうな人はいるけど、あえて陰陽頭に伝えてなさそうだなぁ。猫ジジィさんとか。


『そうだね、頼りたくないし戻りたくないし話したくもないけど、背に腹は代えられない……か。嫌だけど』


 うん、嫌な事はものすごく伝わったよ。でも、手紙を出すことは了承してくれたな。そこは子供みたいに駄々をこねないのが闇命君の年相応に見えない部分だよなぁ。話は進むけど、これでいいのかとなる。


「それじゃ、手紙を出すか。闇命君が書く?」

『優夏が書くことが出来たら書いて、書けるなら』

「闇命君どうか私の身体に戻り手紙を書いてくださいよろしくお願いいします」

『書けないのなら最初から聞かないで』

「スイマセンデシタ」


 久しぶりに聞いたよこの毒舌、もう慣れました。逆に、靖弥からの攻撃の方が痛かった。慣れって、本当に怖いな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る