「精神力は、楽しい事を思い出したらテンションが上がって上手くコントロール出来たりしないか?」

「一回黙ってもらってもいいかな、靖弥」

「なんでだよ。俺も一緒に考えたいのに…………」


 最初の頃の闇命君の気持ち、今の俺と同じだったのかなぁ。馬鹿な発言していたし、今実感したよ。ごめんね、闇命君。


「…………ん? 待てよ」


 精神は、言い換えればメンタル。メンタルが落ちれば体調を崩したりもするし。あながちHPという例えは間違えていないのかもしれない。


 つまり、精神力は体力という考えでもう一度集中すれば、もしかしたら出来るかもしれない。

 一技之長いちぎのちょうは誰にでも使える、そんなに難しいものではないだろ。


 もう一度目を閉じて、息を一定の間隔で吸って、吐く。


 よく、水をイメージするといいとか聞いたことある。今回も、それを応用して水をイメージしてみよう。


 足元に広がる湖、波紋が広がる感覚。徐々に波が高くなっていくようにイメージして、それを刀に纏わせる。


 体から湧き上がるモノ、これが精神力なんだという事を理解するのに、さほど時間はかからなかった。これなら間違いない、集中を切らさぬよう刀に。


「…………これって」


 靖弥の戸惑いの声が聞こえる、出来ているのか? 


 先程まで不安定だったが、今はやっと安定して纏わせる事ができてきた。目をゆっくりと開け、どんな属性か確認する。


「……………………闇?」


 刀に刃に、どす黒い渦のような物が巻かれていた。刀も銀色だったのが、黒く染まっているし、これって大丈夫なのか? 

 今まで一技之長いちぎのちょうを使っている人を見た事が無いからわからない。

 一技之長と陰陽術を組み合わせた技なら見たけど、見本にはならないから思い出す必要はないか。


「これが、一技之長なのか?」

「た、ぶん。闇命君の属性って、闇なのかな。普通に炎とか水とかじゃないんだ。これって、空間とか切れたりするのかな」

「それは試してみたらいいんじゃないか?」

「それもそうだな」


 ここで問いかけても意味は無い、今までみたいに答えが返ってくる訳では無い。やれるのならやってみないと。


 空間を切る…………、ただ上から下に切り裂くだけでいいのかな。結構重たいけど、頑張るか。


「よいしょっと!!!」


 重たいけど頑張って刀を頭の上まで持っていき、何もない空間を斬る!!!!


「おりゃぁぁぁぁあああ!!!!!!」



 ――――――――――スカッ



「え」

「何も、変わらないな」


 ……………………空気を斬りました。


 ただ振り回すだけでは駄目という事か、端を見つけないと駄目って事? でも、無限ループしているし、どうやって見つければいいんだろうか。


 やっぱり、琴平達がどうにかしてくれないと俺達はこのままなのかなぁ、それはちょっと嫌なんだけど。


 いや、思考を止めるな、視野を広くしろ。闇命君に言われただろ、絶対に諦めるな。考え続けろ、続けろ。




 ――――――――――空間を作りだしている媒体を探すのです




「っ、安倍晴明??」

「は? 何を言っているんだ?」


 今、安倍晴明の声が聞こえたような気がした。


 媒体、そうか。こんな大きな空間を作り出しているんだ、必ず媒体があるはず。じゃなかったら、さすがにこんな大きな空間を作りだすなんて不可能だ。というか、無限ループを作りだすなんて不可能だろ。


「靖弥、媒体を探そう」

「媒体?」

「道満の法力を広く伝えている装置だよ。こんなに広く、大きな空間、道満がどんなにすごい実力や法力を持っていたところで一人で作りだすなんて不可能のはず。必ず媒体と呼ばれる何かがあるはずなんだ。それを探そう」


 と言っても、どうやって探せばいいんだ?? 道満の気配が一番強い所を探せばいいのか? でも、今まで気配を探ろうとしても意味はなかった。だから、気配で見つけるのは不可能だろう、手当たり次第に探すしかないのか?


「…………手当たり次第するしかないな」

「え? そんな時間あるの?」

「俺達が歩いて探すとかならないだろうな」


 ん? どういうことだ?


「優夏、自分に結界を張ることは出来るか?」

「え、普段なら出来るけど。何で?」

「なら、いい。輪入道、手当たり次第に炎の玉を放て」


 靖弥は、ずっと隣にいた輪入道の身体を摩りながら、意味の分からない指示を出した。

 手に握られているお札に法力を注ぎ込んでいるからか、暗闇を淡く照らしている。


 何をしようとしているんだ????


「早く自分に結界を張らないと火だるまになるぞ??」

「――――へ?」


 っ、輪入道の周りに沢山の炎の玉。もしかして――……


「――――やれ、輪入道」


 作りだされた炎が四方に放たれたっ――……


 いぃぃぃぃぃぃいやゃゃゃゃゃゃゃやややややややややああああ!!!!!!!!

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