憑依転生した先はクソ生意気な安倍晴明の子孫

桜桃

少年の声

恩を返したい

 青空が広がる景色がどんどん白く染まっていく。息がしにくい、体中が痛い。

 そんな中で耳に入るのは、ごちゃごちゃとした騒音。


 ────何が起きたんだ? 

 体が動かない、頭も回らない。


 薄らぐ視界に入るのは横転している軽トラ、沢山の人、地面に転がっている鉄パイプ。

 そして、赤く染まる地面。


 あぁ、そうだ。友人である靖弥せいやと下校途中に軽トラが突っ込んできたんだっけ。

 俺は軽トラに当たったらしい。靖弥は大丈夫だったのか?


 鉄パイプが、所々赤い。

 あ、あれは、鉄パイプが転がっている近くに、靖弥が倒れてる? もしかして、鉄パイプが靖弥に直撃したのか?


 ────あぁ、そうだ。

 後ろからクラクションが聞こえたんだ。

 振り向いた時にはもう遅かった。


 目の前まで鉄パイプが積まれていた軽トラックが迫ってきていて、避けられないと瞬時に悟った。


 瞬間、体が勝手に動き隣にいた靖弥を押したんだったよな。なのに、なんで靖弥まで倒れ込んでいるんだよ。


 駄目だ、視界が歪む。

 俺は、このまま死ぬのか? 何もできないまま、死んじまうのか?


 横目に映るのは靖弥の姿、手を伸ばしたくても指一本動かす事が出来ない。


 今まで、学校生活ではたくさん助けてもらったというのに、俺は何もできないまま終わるのか。


 地獄だった学校生活を送れていたのは、靖弥が居たからだと言うのに。


 いじめの対象にされた時や、一人でいる時とか。必ず靖弥は一番に気づいて、声をかけてくれた。


 そのおかげで俺にはいじめによるトラウマはない。必ず、靖弥が俺と一緒に居てくれたから。


 いや、嫌だ。せめて、せめて靖弥だけでも助けてよ。恩を、返させてよ、お願いだから――………




【……──ふーん。そんな事を死ぬ直前まで考えるんだ。面白い人を発見したよ】





 んっ、な、なに? 頭の中にいきなり? は? な、何この声。誰?



【仕方がないから、僕の体を一時的に貸してあげる。感謝してよね、凡人】



 いや、なにこれ。誰に感謝しろと。


 

【それじゃ、僕の体を大事にしてよね。


 いや、さっきから何。いきなりな展開で着いていけない。あぁ、だめだ、意識が──……

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