百九十一話 再会を夢見て5

タチアナが放った眩いレーザービーム

は、弓状の島のちょうど反対側の

岸壁に激突した。

すると、レーザービームを

受けた岸壁の岩は、高熱に耐えきれず

液状化し、どろどろとまるで

マグマのように形質を変えて溶け

ていく。



「な、なんだ!! 今のは!」



そこらじゅうでそれを見た魚人兵達の

困惑した声があがる。



「し、島が......! 」



と、震える声で一人の魚人兵は

こう続けて言った。



「半分消えている!?」



そう。タチアナの放った

ライジング・スラッシュによって

三日月島の半分が跡形もなく

消えてしまった。



「な、な、何者だ! あの人間は!」



海の中で指揮を取っていた魚人兵の

軍曹が思わず顔を出し、タチアナを

指差す。



「私の名前はタチアナだ。」



すると、タチアナは自分から大声で

名乗りを上げた。



それを聞いた魚人兵の一人が

軍曹のもとに駆け寄る。



「......軍曹! 奴は帝国精鋭隊の

一人です!」



「て、帝国精鋭隊だと!? 糞!

まだいたのか!いや、怯むな!

帝国精鋭隊だろうと何であろうと、

そんなことはどうでもいい!

全軍! あの人間に一斉射撃だ!」



「......」



しかし、先程のタチアナの

力を目の当たりにした

下っ端の魚人兵達は怯えて

少しも動けない。



「どうした! 何をしている!」



「君が来たらどうだ? まだ人間と

戦いたいのなら、私が相手を

してやろう。さあ......」



タチアナはその軍曹を挑発する。



「な、何をぉ!! 人間ごときが!

えぇい! 槍を持ってこい! 」



それに感化されて軍曹は部下に自分の

槍を持ってこさせる。



「目にもの見せてやる!」



怒りに身を任せた軍曹は、

槍をぶんぶん水の中で振り回し、

水流を起こさせる。

その自分の周りにできた水流を

タチアナ目掛けて放ち、自分も

その水流の中を通ってタチアナに

急接近した。



キンッ!



槍とナイフの金属音が辺りに

なり響く。



「その根性だけは認めてやろう。

だが......」



そう言ってタチアナは、一瞬の隙を

ついて軍曹の槍をナイフで地面に叩き

落とし、手ぶらになった軍曹を

有無を言わさず海に蹴り飛ばした。



「ぐ、軍曹!!!!」



数人の魚人兵達が軍曹に駆け寄る。

軍曹は気絶しているのか、ぐったり

していて動かない。



「ふぅ......」



タチアナはこれでようやく

相手の戦意も削がれるだろうと

一息ついたが、魚人兵達の

反応は真逆だった。



「よくも軍曹を!」



さっきまでタチアナに怯えていた

魚人兵達が、自分の上司の敵を

打とうと槍や吹き矢を手に取る。



「タチアナ様......これは......」



その様子にアルナは不安がる。



「まいったな......てっきりリーダーを

ねじ伏せれば戦意を削げると思って

いたのだが、逆効果だったようだ......」

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