百九十話 再会を夢見て4

「まあ、とりあえず、我々の

すべきことはヨーテル達が帰って

来るまでこの場をのりきることだ。

彼女らが帰ってきたら、ヨーテルに

頼んで船を持ち上げてもらって、

この場を離脱するとしよう。」



「ふ、船でですか......?」



「どうしたのだ、ドッペ。

顔が真っ青だぞ。体調でも悪いのか。」



「い、いえ、そういうわけではなく......」



ドッペは困ったように、アルナと

目を合わせる。



大切な船が壊れたということを

知れば、タチアナ様はお怒りに

なられるのではないか?



ドッペは心のなかでそう

アルナに問いかける。

それを察したアルナも言うべきか

言わないべきかと険しい顔する。



「......? アルナも体調が悪いのか?」



「え!? いえ! 大丈夫です!」



「そうか......」



「いたぞ! 人間だ!!!」



ドッペとアルナを訝しげに見ていた

タチアナだったが、突如、海の中に

潜んでいた魚人兵達に見つかった。



「タチアナ様。ここはわたくしが。」



「よせ、ドッペ。私たちは

これ以上、魚人族を傷つけては

ならない。」



「!? な、何故です!?

彼らは敵──」



「敵ではない。彼らは人間と共に

平和の道を築ける種族だ。」



「タチアナ様。一体何を言って

おられるのですか。」



「......訳はあとで話す。とりあえず、

ここは私に任してくれ。

先ほども言ったが、私達の目的は

時間稼ぎだ。

魚人族を傷つけるのではなく、

脅かす程度でいい。」



そう言って、タチアナは自身の

ナイフを手に取る。



「チェイン!」



タチアナは手に持ったナイフを

天にかざした。

すると、そのナイフに眩い

光の粒が集まり、あっという間に、

そのナイフは黄金に輝きだした。



「すごい......」



アルナはその光の集まるスピード

があまりにも自分とは桁違いで

唖然とする。



「なんて集中力......」



それはドッペも同様だった。

以前、選抜試験でアルナやドッペが

チェインを完成させるために

要した時間は約2分30秒。

それをタチアナは僅か7秒程度で

完成させた。

これが、帝国精鋭隊の力である。



「な、なんだこの光は!?」




一方、海の中は深海まで届くその光に

狼狽していた。



「ライジング......」



タチアナはまるで稲妻をその

身に宿しているかのような

ナイフを強く握る。

そして......



「スラッシュ!」



華麗にナイフを振り下ろした。

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