百十五話 一方地上では2

「おい......なんで船来てねぇんだよ!!!」



「うるさいのだよ。」



「......うるさい。」



「だってよ! ヨーテルのやつ、

言ってただろ! 明日には魔力が復活

するって。」



「......裏切って私たちを......この島に

置いてった......」



「それは無いのだよ。なぜなら、

あの船には長老が乗っているのだから。」



「じゃあ、なんで来ねぇんだよ。」



「......他の幹部に......襲われた?」



「それも無いのだよ。」



「また、長老がいるからか?」



「違う、長老以前にあの船には

ヨーテルがいる。

あいつがあの船にいる限り、

船が襲われるなど

ありえないのだよ。」



「へっ、いつもは喧嘩ばっか

してんのに、意外に信頼

してんだな!」



「......ラブラブ」



「黙るのだよ。確かに俺は

あいつの強さは認めている。

だが、あいつ自体は信頼して

いないのだよ。」



「フューフュー、照れんなって!」



「......照れてる。」



「っ! ......もういいのだよ。」



船が約束通り来ないことで、

バーゼン自身も不安になっている中、

こんな状況でも煽ってくる二人に

疲れて言い返すのを止めた。



「それよりも、どうするのだよ。」



「どうするって言ったてよ......」



三人が途方にくれているそのときだった。




ドカン!!



島がとてつもない爆発音で揺れる。



「おい! なんだこの音!」



「爆発音?」




「......タチアナが......戦ってるのかも......」



「バーゼン、どうする。」




「ここでもたもたしていても

仕方がない。とりあえず行ってみるの

だよ。」



「おう!」



バーゼンの提案にカクバと

鬼灯が頷き、三人は音のした

島の奥へと向かった。















「これは......一体何があったのだよ......」



バーゼンの目の前には、

自爆した機械獣の粉々に吹き飛んだ

部品が散乱していた。



「これ、幹部の体の一部じゃねぇのか?」



「間違いないのだよ。それに、この

辺りの木々を見ろ。ほとんどが跡形もなく

破壊されているのだよ。」




「地面もめちゃくちゃえぐれてるしな。

もしかしてさ、これって......」



「......タチアナが今しがたこの幹部と

戦闘を繰り広げた跡、としか考える他

ないのだよ。」



「だよな。じゃあ、もしかしたら

タチアナがこの辺りにいるかもな。」



「その可能性が高いのだよ。

......ところで鬼灯はどこにいるのだよ。」



「? そういえばいねぇな。どこ

行ったんだ?」



爆発に巻き込まれ、裸地になってしまった

森で、バーゼンとカクバは辺りを見渡す。



「おい、どこ行ってたんだ。

ホーズキ!」



すると、いつから戻ってきたのか

鬼灯はあるものを抱えて

カクバとバーゼンの後ろに

立っていた。




「それは......」



バーゼンは鬼灯が持っていた

物を見て、言葉を失う。



「それってタチアナの鎧と剣じゃ

ねぇか!!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る