百十四話 一方地上では
「おーーい!! タチアナ!!」
木々が生い茂る森の中で男の声が
響き渡る。
「くそ! どこ行っちまったんだ!」
すると、大声を出していた男の隣に
木の上からすたっと女が
着地する。
「どうだったのだよ?」
「......森、多すぎて......よく......わか
んない。」
「まだこの島の幹部は空にいたか?」
「......いた。地上に墜落した......やつは
わかんない。」
「先程は前触れもなく俺たちを
襲ってきたのに、今度はこのうるさい
やつがばか騒ぎしていても、襲ってこない
のは、一体どういうことなのだよ。」
「おい。」
「......きっと......耳障りだから。」
「おい! そのうるさいやつってのは──」
「お前なのだよ。」
バーゼンはきっぱりカクバに言った。
そして、行方不明の二人を捜索してから
何も得られぬまま、日が落ちてきた。
「......いない......」
「今日はここで休んでおくのだよ。」
「......」
「そう落ち込むなって! ホーズキ。
ほら! このトカゲみてぇなやつの
しっぽ分けてやるからよ!」
「......いらない。」
「とりあえず、明日は船に戻って
さらに人を増やすのだよ。」
「......嫌。」
「これは長老たちと交わした約束
なのだよ。」
「......そんな暇があったら......
はやく......タチアナ......見つける。」
「はぁ......」
断固として意思を変えない鬼灯に、
バーゼンはため息をつく。
ならば、とバーゼンは鬼灯にこっそり
耳打ちをした。
「明日船に戻ったら、タチアナが
いつも愛用している抱き枕を部屋から
こっそり持ってこようと思うのだが──」
「いる!」
「お前らな......」
いつも退屈な目をしている鬼灯の
目が眩いほどに光輝くのだった。
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