八十二話 ジュラ島8

「ねぇ、ねえ、なんかこの船に

黒いのが飛んできてるよ。」



島の上空を進む船に

乗っていたテイルがぼーっと

空を眺めていると、接近してくる

機械獣を発見した。




「な、なんなのあれ。

あれが長老の占いで出たこの島の幹部

なの?」



「そのようじゃな。」



「ヤバイよ!あの黒いのめちゃくちゃ

速いよ!」



「うるさいわね、そんなの見れば

わかるわよ!」




慌て出すテイルにムカついたヨーテルは

彼女に怒鳴る。




「まいったのお......やはり、幹部を

まだ討伐しておらんかったか。」



「どうするの? 長老。」



「......こうなったらわしらで

どうにかするしかなかろう。」



「そうね。」



といっても、ほとんどの遠距離攻撃が

できる職業者達は討伐組の為、

今この船に乗っている者の中に

空を飛ぶ敵に攻撃を与えることの

できる者は皆無であった。



「私、浮遊魔法使ってるから、

そんなに強い魔法使えないわよ。」



唯一遠距離攻撃のできるヨーテルが

言った。



「ヨーテルちゃん。わしを浮かせら

れんか?わしも 空を飛べたら

あの幹部も倒せるのじゃが。」



「それは無理よ。浮遊魔法は生き物には

かけられ無いわ。」



「ふむ......そうか。それなら──」



そう言うと長老は船内を見渡す。

そして目に留まったアルナに




「すまんが食料庫にあったリンゴを

持ってきてくれんかの?」



と言った。




「り、リンゴですか?」



「そうじゃ。有るだけ全部じゃ。」



「わ、わかりました。」



アルナは承知すると、食料庫に

走っていった。



「すまんがヨーテルちゃん。リンゴが

来るまで粘っててくれ。」



「お安い御用よ。」



ヨーテルは間近に迫った機械獣に

攻撃魔法を開始した。








「はぁ......はぁ......長老まだなの!?」



攻撃を開始して十五分が

経過した頃、疲れた声でヨーテルは尋ねる。



「お、お待たせしました!」



その時、アルナが袋一杯のリンゴを

抱えて帰ってきた。



「おお、すまんの。」



そう言って長老はリンゴを野球ボール

のように持って



「さて、次はわしの番じゃ。」



と機械獣をまじまじと見て言った。

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