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土井たちと菅谷とは気が合わないと人種だと思っていたが、意外にもすぐに意気投合したのは驚いた。

 菅谷は林と同様にまともに学校へ行くから、学校が終わった後集合していつものゲームセンターやらファミレスなどに行き遊んだ。同時に、行ける時は朝彼とジョギングをしてボクシングも習うという日々を繰り返していた。

「意外だなあ」

 ファミレスで隣に座っている浜屋が自分の正面に座っている菅谷の食べっぷりをマジマジと観ている。

「その身体で大食だもんな。しかも肉しか食ってないし」

 彼はもうハンバーグステーキ三皿目に突入していた。それでも食欲は止まらず食べ続けている。

「どっちかというと、ベジタリアンで草食のイメージだよな」

 とからかったのは土屋だ。

「そうかなあ。肉旨いし。みんなが食べない気がするけど」

 相変わらず菅谷は意外というか変わった奴だ。だが、彼といるとどこか明るくなる。

「そう。ボクシングって何年続けているの?」

 そう聞いたのは林。

「まだ五年くらい」

「へえ。五年でそんな強くなるんだな。俺もやろうかな」

「きっと林君ならいいところまで行けると思う。体格も僕よりもいいし」

「マジで? やろうかな」

「でも会費が月一万かかるよ」

「げ。。。それは無理だわ」

「いいじゃない。今まで通り、ロードワーク一の時に一緒に練習しようよ。その時に僕で良かったら教えてあげるから」

 きっとすぐに意気投合したのは、彼が単純に喧嘩が強くて、それでいて人見知りなどせず気さくだからだろう。

 俺たち四人は幼い頃から幼馴染で悪さばっかりしていて、教師からも親からも叱られ呆れられて何かと敵が多かった。それに対して負けじと反発して勝ってきて、時には誰かを利用して盾として使って自分たちの居場所を作って生きてきた。

 だから、嫌われることには慣れているし、むしろ、それが快感だと思っていた。逆にこうして嫌わずに好意的に近寄る奴は珍しくて面白いのかもしれない。

  相手のことを必要以上に怖がったり嫌ったりすれば、当然のように相手もオウム返しのようにそれをそれ以上に返してくる。その逆もあるという、そんな単純明快なことだ。

「それにしても、良かったな。強い仲間が二人も増えて」

「でも僕は喧嘩はしないよ」

 土井の言ったことに対して菅谷はすかさず反発する。

「わかってるって。用心棒だよ。一時は黒木がピンチでどうしようかと思ったよな」

 忘れていたがそんなこともあった。と言っても一カ月くらい前のついこの間のことだ。もう、何年も前に起こったことのように感じる。

「そういえば、メガネちゃんどうしているかな」

 と、俺が言いかけたときに辺りの電気が消える。

 同時にハッピーバースデーの曲が流れてくる。それに合わせて周りの四人が手拍子をして下手くそな歌を披露している。

「お誕生日おめでとうございます!!」

 小さなホールケーキだったが、店員が持ってきて俺の前に置く。

「何だよこれ!!」

 思いのよらないサプライズに照れ隠しに隣の浜屋の肩を軽く殴る。

「この店の割引券が貰えるアンケートしているだろ? そこに生年月日書ていただろ? そしたら店側から誕生日の日にサプライズケーキを送れる割引券が来てな」

 そういえば、毎年そういうのが俺の所にも手紙で送られてきた。でもそんなことやろうとも考えもしないしやられるとは夢にも思わなかった。

「こういうのは誰だって喜ぶから菅谷がやろうって言ってくれてな」

 確かに照れるけど嬉しい。

 自分の誕生日。今日であることを忘れていた。というより、ここ数年、、自分の誕生日はそういえば過ぎていたということが殆どだった。何もない、いつもと同じ日だった。

「それで、これは俺たちからプレゼント」

 そう言って、土井から渡されたのはボクシンググローブだった。

「これでもっと強くなってね」

 浜屋がふざけて首を傾げる。

「おいおい。こんなのどうするんだよ。ふざけんなよ」

 俺は乱暴にテーブルにそれを置く。だが嬉しかった。きっと顔は凄いニタニタしている。

「だって、お前が好きなのわかんないんだもん」

 困ったように言うのは林。

「だからいいって。こんなの用意しなくてよ」

 ありがとうと素直に言えなかった。

 本当は人生の中で今までにないくらい嬉しいことだったのに。

「じゃあいらない?」

 菅谷が、そのグローブを取り上げようとする。

「いや、まあ、買ってしまったものは仕方ない。もらってあげるよ」

 負けず嫌い。意地っ張りな俺の癖がまた出る。

「ほら、ケーキも食えよ」

 と言って、浜屋がケーキの皿を手に取って無理矢理顔に近づけさせる。お陰でクリームが鼻や頬に付いてしまう。爆笑が四人から起きる。

「何すんだよ」

 俺は再び彼の肩を今度は思い切り殴る。

「甘! このケーキ」

 でも旨い。フォ―クで次々とケーキを口に運びながら幸せだとこんなに幸せだと感じていいのかというくらいに幸せだった。

 こいつらと仲間で良かった。

 言葉にはできないし、態度にも現わせないけど、心からこの四人に感謝した。

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