リム、プリシラを探す。互いの声。
さて、まだあまり心配していなかった母親達とは逆に、帰宅途中でプリシラを見失ってしまったリムは、プリシラが迷子になってしまったことは自分の責任だと、子ども心にも責任感を強く感じた。
そして、帰って来た道を引き返し、プリシラの名を呼びながら、プリシラが居そうなところを目を凝らして覗き込んだり、立ち止まって首を伸ばして遠くの方を見渡したり、あちこち駆け回って、夢中でプリシラを探した。夜ご飯までにプリシラを連れて帰れば、自分のママやシーラママやパパも心配しないよな?そう言い聞かせて自分自身を安心させながら。
しかし、プリシラが、どこかで1人で心細い思いをしていたりしないか、いつも、もう少しで家に着く、という所で「リムお兄ちゃんおトイレ」とトイレに行きたくなるクセがあるので心配した。今日も遊んでいる最中にトイレに連れて行ったので、もしも、また行きたくなっていたりしていたら、と思うと、リムは、プリシラより2才年上とはいえ、気が気でない。
しかし、リムは、一旦、家に帰って親を呼び、一緒にプリシラを探すことを思いつかなかった。自分1人でプリシラを見つけて、無事、家に戻りたいと思った。それだけリムは責任感が強いといおうか、幼いながらもプリシラへの愛情が深かった。
リムは、みんなで遊んだヒマワリ公園に戻って、その近くの大きな集会所が建っている、みんなと別れた十字路にまた来た。その真ん中で、今度は、両手をメガホンのように両頬に当て、前後左右、どの方向にも聞こえるように出来るだけ首を回し、
「おーい!プリシラぁー!」と、大声で呼んでみた。
さて、プリシラは、同じ場所に留まり、もたげていた首が
辛くなったので、両膝を立てて座ったまま、その膝の上に両手を重ねて置き、その上にぐったりと頭を乗せ、肩を上下させて喉の奥を引き、息を早く吸い込むようにして、ひくひくと泣いていた。
そんな時、かすかにリムが自分の名前を呼ぶ声が聞こえた気がした。あの、いつも頼もしく優しい、歌も上手な“リムお兄ちゃん”の温かく澄んだ声が・・・・・・
「リ、リムお兄たん・・・・・・?」
プリシラは、はっとして顔をあげ、目を見開いて辺りをキョロキョロと見渡す。
「リムお兄ちゃーん――!」
座ったまま、荒い砂利が敷いてある道路に顔を向け、手の平に砂利の跡が付くほど手を押し付けて、リムの声が聞こえた方へ、ありったけの力を振りしぼって叫んだ。
2人は、数メートルも離れていなかったが、2人の間には、大きな集会所があり、小さい2人の互いの姿は見えなかった。
「――――ん?プリシラの声?」
リムは、妹のように可愛がっているプリシラの声が、集会所の向こうから聞こえたような気がして、一度耳を澄ました。もう一度、その方向に向かってプリシラの名を大きな声で呼んでみると、
「おっ・・・・・・にいちゃあーーーん!」と、泣き叫ぶプリシラの声が、集会所の向こうから、今度ははっきりと聞こえた。
「あ、あれはプリシラだ!おーい、シーラー!」
リムは、聞こえた声はプリシラの声だと確信し、急いで集会所の裏手の方へ、ぐるりと回った。すると、リム達がいつもほとんど遊ばない小さい広場のような公園の片隅に、しゃがんで、歪んだ顔つきをして、頬には涙の跡が付き、髪が乱れたプリシラを見つけ、一安心して彼女に声を掛けた。
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