政略結婚したくない2人が、他国の王子の求婚を退けるまでの3日間

ねむりねずみ@まひろ

第2話

⚠️注意事項⚠️

政略結婚したくない2人シリーズの、2話目にあたる台本となります。


1話→政略結婚したくない2人が、婚約破棄するまでの3日間



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イベントで販売したい、お客様を呼ぶ演劇に使いたい、など金銭の発生する物は、別途ご相談ください。


■キャラクターの性別は、絶対ではありませんが、世界観を壊すような無理な変更はやめてください


■ CASで声劇する場合、事前に教えて頂ければ聞きに行けるかもしれませんので、よかったらご連絡ください!

Twitter→ @nanakoenana


『キャラクター』

リーゼ・マトライヤ姫:緑豊かなマトライヤ国の姫、天然気質のある可愛らしい女性

一人称「わたくし」


ルービル・アトマデナデナッフィオレント・ナグラリア王子:水の大国ナグラリアの王太子。子供の頃からリーゼが好きで、あの手この手で婚約を維持しようとする

一人称「わたし」


ナナリー:リーゼのお付の侍女。侍女でありながら用心棒でもある。強く美しい完璧な女性

一人称「わたし」


アビー王子:砂漠の国ハルバードの王太子。 腕に巻いた鈴のアクセサリーが印象的、男女共に魅了する程の美貌 飄々としていて、中々本心はみせない

一人称「俺」



『コピペ用キャスト表』


リーゼ・マトライヤ姫:

ルービル・アトマデナデナッフィオレント・ナグラリア王子:

ナナリー:

アビー王子:




以下台本

――――――――――――――――


【無事に婚約の儀が終わった翌日、ナグラリア城の一室】



ルービル「リーゼ、今日も綺麗だよ」


リーゼ「そんな、ルービル様…照れてしまいますわっ」


ルービル「照れてる姿もまた可憐だ、よし宮廷画家に記録させよう」


リーゼ「ルービル様?!」


ルービル「ははは、冗談だ」


リーゼ「もう、ルービル様ったら」


ルービル「リーゼ、我が国の習わしとはいえ、慣れない環境で良くやってくれているようだな」


リーゼ「そ、そりゃあ、無事に婚約の儀も済んだ事ですし、1度自国に帰ろうと思ってましたのに、その3日後に、花嫁の試練があるなんて聞いていませんでしたけどっ!…でも、その試練を乗り越えなければ、ルービル様のお嫁さんになれないのですから…やるしかないじゃありませんか!」


ルービル「……やっぱり宮廷画家と宮廷演奏家に頼んで、絵と歌で記録を…」


リーゼ「もう!ルービル様っ!!」



【ナナリーの声と共に突如ドアが開けられる】



ナナリー「リーゼ様!大変です、リーゼ様!」


リーゼ「ひゃっ、ナナリー!びっくりするじゃない!」


ルービル「どうしたんだいナナリー?リーゼの侍女である君が、そんなに慌てるなんて」


ナナリー「ナグラリア王太子様…失礼致しました。ですが!!…リーゼ様、こちらを…」


リーゼ「……?手紙?誰からかしら?…ハルバード・アビー?」


ルービル「ハルバード?!」


ナナリー「砂漠の国ハルバードの王太子様でございます」


リーゼ「…へ?砂漠の国ハルバードって…あの帝国と並ぶ大国の?」


ナナリー「そうです、帝国との対戦で、唯一 白星をあげた、あのハルバードです!」


リーゼ「な、なんで、そんな人からの手紙が、私に?」


ナナリー「わかりません、ともかく、1度お読みになって下さいませ!」


リーゼ「ひぃん…やだ!なんだか、嫌な予感がするう!」


ナナリー「リーゼ様!お気を確かに!!」


ルービル「うーむ…リーゼさえ良ければ、私が開けようか?」


リーゼ「ルービル様、いいんですの?」


ルービル「可愛いリーゼの為だからね」


リーゼ「ルービル様…」


ルービル「ナナリー!ペーパーナイフを」


ナナリー「…かしこまりました、こちらになります」


ルービル「ありがとう…。じゃあ、読むよ?親愛なるマトライヤ国の姫君、リーゼ殿…」


アビー「親愛なるマトライヤ国の姫君、リーゼ殿。俺は、砂漠のハレム…ハルバード国の次期王…ハルバード・アビーだ」


ナナリー「3点ですね」


ルービル「同感だ」


リーゼ「ふぇ?2人とも?!」


ナナリー「なんですかこの書き出しは!親愛なるマトライヤ国の姫君リーゼ殿…ここまでは良しとしましょう」


ルービル「うむ」


ナナリー「問題はその後です。まずは相手を敬う言葉や、季節の移り変わりなどを伝え、美しい言葉でワンクッション挟むのが、王族としての正しい手紙の書き出しともいえましょう。このように、いきなり自己紹介をなされるなど、もってのほかでございます。」


ルービル「そうだそうだ!」


ナナリー「これでしたら、ナグラリア王太子様の手紙の方が、まだましでございます」


ルービル「ナナリー?」


リーゼ「だめよ!!ナナリー!不敬罪になるわよ!!」


ナナリー「失礼致しました」


ルービル「よい、続きを読もう」


アビー「大昔の大戦で、マトライヤ国もナグラリア国も、あのルブラシア帝国に負けて賠償中なんだろう?そんな昔の馬鹿共の汚点を、未だに被り続けてるリーゼちゃん…君の事がが不憫でならないんだ。」


ルービル「おい!なぜいきなり、親しげにリーゼの名前を呼ぶんだこいつは!」


ナナリー「ナグラリア王太子様、まだ文章の途中でございます、お静かに」


リーゼ「ナ、ナナリーー!」


アビー「ナグラリア王太子なんかと婚約するって聞いたけど、泥舟に乗ったら沈むだけ…オススメはしないよ。そこで、俺は考えたのさ!マトライヤ国の賠償は、このハルバード国が肩代わりしようってね☆

ああ、細かい条件や決まりなんてないよ?簡単に言うと、ナグラリア王太子なんてやめて、俺の所においで?ついでに君の所の侍女、確かナナリーと言ったかな?彼女も一緒で構わないよ。それじゃあ、3日後…ナグラリア国へ迎えに行くから、待っててねー!ハルバード・アビー」


ルービル「ナナリー…燃やせ」


ナナリー「かしこまりました」


リーゼ「燃やしちゃだめですよ!」


ルービル「リーゼは、この手紙の男が良いのかい?」


リーゼ「いえ、そういう訳では…」


ナナリー「ですが、未だ賠償金を払い続けている我が国にとっては、願ってもない申し出なのは、間違いありませんね…」


リーゼ「ナナリー?!」


ルービル「ほう、ナナリー…君は奴の味方をするのかい?」


ナナリー「いえ、私はリーゼ様の味方です」


ルービル「そのリーゼは、私の方が良いようだが?」


ナナリー「リーゼ様個人としてはそうでしょう、ですが、国としてはハルバード国の方が、大変魅力的かと…」


リーゼ「もう!!2人ともやめてください!!それより、迎えにくるって書いてあるけど…手紙の差し出し日は…」


ナナリー「3日前ですね」


リーゼ「…じゃあ、3日後にナグラリア国にくるって事は…」


ナナリー「…本日ですね」


リーゼ「へ?!た、大変じゃない!何か対策を練らないと…」


ルービル「リーゼ、私との婚約を続けるために…そんこまで…」


リーゼ「ふぇ?!あ、ちっ違いますっ!!そのっ、ハルバード国の王太子様に、失礼があったらいけないと思って…ですからっ、そのっ…」


ルービル「…照れなくて良い、私は最高の妻を持ったようだ」


ナナリー「お言葉ですが、ナグラリア王太子様、お2人は、まだ婚約止まりでございます」


ルービル「ナナリー、めざといぞ!せっかくいい雰囲気だったのに…」


ナナリー「させません」


リーゼ「もう!2人とも!他国の王太子様に失礼があるのは、いけない事なんですよ!」


ルービル「いや、アイツには、その位で丁度いい」


リーゼ「もう、ルービル様!国交問題にされたらどうするんですか?!」


ルービル「だが、リーゼをアイツに会わせるのは嫌だ!」


ナナリー「ナグラリア王太子様、子供じゃないのですからお諦めください」


ルービル「ナナリー!!今、私の味方をしなければ、後悔するぞ?!」


ナナリー「…ですが」


リーゼ「もう!2人で仲良くお喋りしてないで、対策を考えてください!約束の時間がきてしまいますよ!!」


ルービル「おや、リーゼ…嫉妬してるのかい?大丈夫、私は君一筋だよ」


ナナリー「私も、ナグラリア王太子様とは、御遠慮致します」


リーゼ「もう!ちがうったらぁぁ!」



【応接間のドアが開かれ、褐色肌にキラキラと光る白の髪をした、ハルバード国王太子のアビーが入ってくる】



アビー「やあ、失礼するよー!あ、リーゼちゃん!みーつけた!」


リーゼ「ひゃっ、ご、ご機嫌麗しゅう…えっと…」


アビー「俺からの手紙は、読んでくれたかな?」


リーゼ「手紙、ということは…ハルバード王太子様…?」


アビー「んー、そんな硬っ苦しい呼び方じゃなくてさ、アビーって呼んでよ?それか昔みたいに…」


ルービル「…これはこれは、遠路はるばるようこそ、アビー王太子殿。会話の最中に割り込んでくるとは、流石、自由の国ハルバードだ」


アビー「んー?誰かと思えばナグラリア王太子じゃないか、相変わらず重箱の隅をつつく小姑のような性格だなぁ。そんなんじゃ、リーゼちゃんの未来が心配だよ」


ルービル「心配してもらわずとも、私が幸せにするから大丈夫だ」


アビー「いやー、こんな心の狭い奴が夫になるだなんて、窮屈すぎて息が詰まっちまう…リーゼちゃんには真っ白な翼を纏い、大空を飛び回るあの鳥のような自由がお似合いさ。って事でリーゼちゃん、俺ん所の嫁にこないかい?ちゅっ」



【一瞬の間を詰めて、リーゼの手の甲にキスするアビー】



リーゼ「ひゃあっ」


ルービル「アビー!!リーゼから離れろ!!」


アビー「嫌だね!久しぶりの再開なんだから、邪魔しないでくれないかい?」


ルービル「いいから、その手を離せ!!」


アビー「なんだよ、せっかくいい情報を仕入れてきたってのに…」


ルービル「何がいい情報だ!!どうせ適当なことばかり…」


アビー「ルブラシア帝国…」


ルービル「…っ」


ナナリー「っ?!」


アビー「最近、どうもきな臭いんだ…」


ルービル「唯一白星を上げたハルバードが、何を…」


アビー「各所から変死体が発見されている」


ルービル「何?」


リーゼ「まぁっ…」


アビー「外傷も無し、流行病等の疑いも無し…」


ルービル「ハルバードでも…変死体が?」


リーゼ「ルービル様、ハルバードでも…という事は、まさか…」


ルービル「ああ。この所、スラムの方で変死体が発見されることがあってな」


リーゼ「そんな…」


アビー「そして、共通するのは、死体から微かに香る…甘い香り」


ルービル「甘い香り…まさかっ」


アビー「まあ、大方想像通りだろう。帝国から流れてきたと噂の麻薬…通称ジギー。一度使えば二度とまともな暮らしが出来ないと言われている、薬さ」


ナナリー「…っ」


リーゼ「大丈夫ナナリー、顔が真っ青よ?」


ナナリー「…いえ、問題ありません」


アビー「どうよ、有益な情報だろう?」


ルービル「ああ、感謝する」


アビー「って事で、リーゼちゃん!さっきの続きを…」


ルービル「それとこれとは話が別だ!10秒以内にその手を離せ! ナナリー!武器の用意を!!」


ナナリー「かしこまりました!リーゼ様に触れた不埒者を排除致します」


アビー「おーこわっ、そんな怖い顔してたらリーゼちゃんが怯えるだろぉ?」



【そう言いつつ、リーゼの肩に手を回し後ろから抱きしめるアビー】



ルービル「なっ!!」


リーゼ「ひやぁぁ!!ハルバード王太子様っあのっ…」


アビー「んー?どうした?」


リーゼ「後ろから、抱きしめないでくださいませっ…」


アビー「はは、照れてるのかい?リーゼちゃんは相変わらず可愛いなぁ!」


リーゼ「あ、相変わらずって…ハルバード王太子様?」


アビー「じゃあ、アビーって呼んだら許してあげる」


リーゼ「へ?!むっ、無理ですわ!!」


アビー「じゃあ離さない」


リーゼ「あうぅ…。ぁ…アビー様」


アビー「ふふ、合格!」


リーゼ「ふぁぁ、では離してくださいませっ」


アビー「え?嫌だけど?」


リーゼ「何で?!」


アビー「許すとは言ったけど、離すとは言ってないじゃん」


リーゼ「ふぇぇぇ?!そんなぁ!」


ルービル「…8…9…10!!いけ!!ナナリー!!」


ナナリー「かしこまりました!リーゼ様から離れなさい!!はぁぁあ!!」



【ナナリー、仕込みナイフを投げアビーを威嚇、アビーはリーゼを抱き抱え一目散に逃げる】



アビー「おーっと、こりゃぁ本気モードだ!こういう時は逃げるが勝ち!!」


リーゼ「ふぁあ?!ハルバード王太子様っ?!」


アビー「アビーだろぉ?さあ、リーゼちゃん、俺様と愛の逃避行といこうか!」


リーゼ「ひ…ひやぁああ!」


ナナリー「あっ!!リーゼ様っ!!」


ルービル「ナナリー追え!!私は別ルートから行く!!」


ナナリー「かしこまりました!!」


ルービル「…だからアイツには、会わせたくなかったんだ!!」



【2人を追って去るナナリー、ルービルも後を追う 】



アビー「ここまで来れば一安心…かな?」


リーゼ「あっアビー様!おろしてくださいまし!!」


アビー「ああ、ごめんごめん」


リーゼ「…?ありがとうございます…」


アビー「にしても、リーゼちゃんの侍女…ありゃ本気で殺しにかかってたねぇ」


リーゼ「あわわっ、あのっ…不敬罪だけはどうかっ」


アビー「ん?ああ、大丈夫!不敬罪にはならないと思うから、安心して!」


リーゼ「そ、そうなんですの?」


アビー「そうそう、それよりこの薔薇の庭園…相変わらず凄いんだけど、昔とちょっと変わったみたいだね」


リーゼ「ええ、ルービル様が、私のために庭園を整備したと仰っていましたわ」


アビー「ああ、リーゼちゃん、この間攫われてたもんね」


リーゼ「そうなんですの、まさか攫われるなん…て。…ん?」


アビー「どうしたの?」


リーゼ「アビー様、なぜ私が攫われたと知っているのです?」


アビー「ああ、見てたから」


リーゼ「見てた?」


アビー「そう。リーゼちゃん達が城に来た日、俺も来てたんだよね」


リーゼ「そうだったんですの?でも、お会いしませんでしたわね」


アビー「国王陛下と一緒だったからね」


リーゼ「まあ、ではあの日の来客者はアビー様だったのですね!ですが、攫われた所を見てたというのは一体…」


アビー「ああ、来賓室のバルコニーから、リーゼちゃんの部屋のバルコニーが見えるんだよ、ほらあそこ。あれが俺のいた部屋。何となく眠れなくてバルコニーで涼んでたらさ、向かいの屋根から、バルコニーに降りる影が見えたんだよねー。んで、部屋に入ったと思ったら、今度は人を抱えてたもんだから、こりゃあ何かあるなって、後を付けたのさ」


リーゼ「そうだったんですの」



【アビーのアクセサリーの鈴がなる】



リーゼ「…鈴の音?あら?この音どこかで…」


アビー「薔薇園の前で止まったから、そいつを片付けてみたら、リーゼちゃんが手を縛られて眠ってたってわけ。縛られてた紐は、すぐに緩めたから痕は残ってないと思うけど、大丈夫だった?」


リーゼ「あ、はい。すんなり縄が解けたのはそういう事でしたのね…じゃあ、あの時聞こえた鈴の音は…まさか」


アビー「ああ、この腕輪の音?」


リーゼ「それです!はっ…あの時はすみませんでした」


アビー「どうしたんだい?」


リーゼ「私、アビー様が助けて下さったのに、追っ手かと思って逃げてしまいました…」


アビー「ああ、気にする事ないよ。暗闇に1人にした俺が悪い。怪しい奴を城へ運ぶ前に、リーゼちゃんを保護するべきだった…すまなかったね」


リーゼ「そんな事ありませんわ!私、アビー様が居なかったら、攫われたまま行方不明になっていたかもしれませんもの…本当にありがとうございました」


アビー「…そう言う所、変わってないね」


リーゼ「あの、それってどういう」



【リーゼを探すナナリーの叫び声が聞こえてくる



ナナリー「リーゼ様!!!どこですリーゼ様ぁぁぁ?!?!」


アビー「おーおー、流石忠犬!しつこさは折り紙付きだな!リーゼちゃんちょーっと失礼!」


リーゼ「ひゃぁあ!」


ナナリー「?!こっちからリーゼ様の声が!!!リーゼ様ぁぁあ!!」


アビー「まじかよ、アイツ…本気で犬なんじゃねえの…」


リーゼ「アビー様っあのっ!!」


アビー「ごめんね、リーゼちゃん!今アイツに捕まるのは愚策だから、逃げるよー!」


リーゼ「アビー様、ここの薔薇園は迷路になっていて…」


アビー「大丈夫!!ここを右、こっちは左…まっすぐ進んで…右3回っと!…よし、巻いたな!」


リーゼ「…あ、アビー様?この抜け道の事を知っていたんですの?」


アビー「ああ、覚えてない?昔、リーゼちゃんとルービルと3人で会ってたんだけど」


リーゼ「へ?」


アビー「ほら、昔、国交会議の時とか他国が一同に介する時があったじゃん?その時、陛下達の目を盗んで城を抜け出して、町でお忍びで会ってたじゃん、忘れちまったかな?」


リーゼ「あっ…ルーと、あーちゃん…あら?でもあーちゃんは女の子で…」


アビー「…あー、あの頃は華奢で、姉さん達のお古で遊ばれてたから…」


リーゼ「じ、しゃあ本当にあーちゃん…なの?!」


アビー「そうそう、信じて貰えないなら…ああ、そうた!あの頃、リーゼちゃんはパン屋で黒麦パンが硬くて噛みきれずに泣いちゃったり、城に帰るのが寂しくて座り込んで動かなくなったり…裏の畑でカボチャを…」


リーゼ「ひやぁぁああ!!!お、思い出しました!!!思い出しましたからっ!!やめてくださいまし!」


アビー「ならよし!」


リーゼ「あうう…もうお嫁にいけません」


アビー「大丈夫大丈夫、その時は俺がもらってあげるから!」


リーゼ「もう!アビー様!」


アビー「それで、俺が秘密を知ってる理由は理解して貰えたかな?」


リーゼ「はい。では、ルービル様が、この抜け道の秘密を教えてくれた時も…」


アビー「もちろん俺もいたよ?」


リーゼ「そうでしたのね!ルービル様は、そんな事一言もおっしゃいませんでしたので…私てっきり…」


アビー「あー、それはね…」



【耳打ちしようとした矢先に、現れるルービルとナナリー】



ルービル「そこまでだ」


ナナリー「やっと見つけました、リーゼ様!!!」


リーゼ「ルービル様、ナナリー!」


アビー「おーっと、保護者共のお出ましだ」


ルービル「アビー!リーゼから離れろ!!」


アビー「はいはい、わかりましたよ。ほら、離れるからその殺気を沈めろって。それと、ナナリーちゃん、背後から狙ってんの丸わかりだぞ」


ナナリー「なっ!」


アビー「…なんて言うとでも思ったか?くらえ、目眩し!」


ルービル「なっ!!」


ナナリー「眩しいっ!!」


アビー「魔道公国アルバリオン特性の目眩しさ、リーゼちゃん、悪いけどまだまだ付き合って貰うからねー!」


リーゼ「はわわわわ」



【リーゼを担いで居なくなるアビー】



ルービル「あの野郎…」


ナナリー「不覚…でした。申し訳ございません」


ルービル「ナナリー、奴を追うぞ!!」


ナナリー「かしこまりました!!」



【街中を走り抜け 人気の少ないスラム街まで来る2人】



リーゼ「あっあの、アビー様!」


アビー「んー?どうしたー、口を閉じてないと舌噛むぞ?」


リーゼ「ど、どこに向かってるんですのっ?!」


アビー「あー、逃げるついでにちょっと確認したいことがあってさ、スラムの方に向かってる」


リーゼ「ス、スラムですか?!」


アビー「ああ、もちろん危ないところには連れていかないよ?行くところは孤児院だから安心して!」


リーゼ「そう…でしたの」


アビー「さあ、ついた」


リーゼ「…あ、ありがとうございます」


アビー「いやー、流れとはいえ、むしろ連れ出しちゃって悪かったね」


リーゼ「そりゃびっくりはしましたけど、アビー様の目がとても真剣でしたので…」


アビー「……わお、リーゼちゃん…君、やっぱり凄いね」


リーゼ「へ?な、何がですの?」


アビー「んー内緒」


リーゼ「???」


アビー「さてと、この辺りを散策がてら孤児院に向かいますか」


リーゼ「孤児院…」


アビー「リーゼちゃんは孤児院に行くのは初めてかい?」


リーゼ「はい…マトライヤ国は小規模な国でしたので、教会のシスター達が面倒を見ていましたので、孤児院として確立しておりませんでしたわ」


アビー「まあ、似たような所だよ。身寄りのない子供達が安心して暮らせる場所…子供の数だけ事情があるからね、必要な場所さ」


リーゼ「そうですわね…。あの、ハルバードにも子供達のための施設はありますの?」


アビー「…うちは、砂漠の国だから、孤児院なんて大層なものはないんだ、それどころか闇市や奴隷商に売り付ける奴だっている」


リーゼ「そんな、奴隷制度は廃止され今では重罪ですのよ?!」


アビー「ああいう奴らは、法の目を掻い潜るから厄介なのさ。今回の件も…子供達を保護していた所、闇市からジギーが発見されてね…」


リーゼ「ジギーとは…なんですの?麻薬の類というのはわかりましたが」


アビー「ジギーはね、もとは薬の一種さ。正式名称はジギラコス草。正しく使えば、病の進行を遅らせたり治療薬になる。だけど…これがまた高価でね、貧民には手に入らない代物なのさ。ま、…そこに目をつけられたんだろうね。安価で手に入りやすい偽物が闇市で出回り始めた…それが俺達が追ってるジギー」


リーゼ「まぁ、そうでしたの…」


アビー「それで、ジギーの出処を探っていたら、帝国にたどり着いたってわけ。さあ、ついた。孤児院に誰か居るかな…と…ん?人の気配がない」


リーゼ「そんな事がわかるんですの?」


アビー「ああ、気配察知に関しては、そうとう訓練してるからね」


リーゼ「まあ、そうでしたの…誰もいらっしゃらないのです?」


アビー「みたいだね。でもおかしいな…この真昼間に孤児院に誰も居ないなんて、ありえないんだけど」


リーゼ「皆さんそろってお出かけされてるとか…?」


アビー「だと良いけど…ちょっと裏口に回ってみるか、リーゼちゃんは…」


リーゼ「私も行きますわ!」


アビー「わかった、じゃあ行こう」



【裏口に回ってみる2人】



アビー「誰も居ない…か。ん?鍵が開いてる?」


リーゼ「不用心ですわね」


アビー「…嫌な予感がする!中へ入ろう!」


リーゼ「わかりましたわ!」



【孤児院に入る2人】



アビー「足元に気をつけて…ん?広間に誰か倒れて…っ?!おい!大丈夫か?!おい!!」


リーゼ「アビー様…子供達が倒れて…」


アビー「おい!!誰か!意識のあるやつはいないのか!なぁ!!……甘い香り…?くそっ!!ここでもか!!」


リーゼ「アビー様どうしましょう…」


アビー「とりあえず、ルービル達に連絡しないと…」



【孤児院の廊下のおくから、フラフラと歩く男と目が合う】



リーゼ「ア…アビー様…あの…」


アビー「…リーゼちゃん…どうし…?!」


リーゼ「廊下にいる…あの、人…なんだかこっちに向かって来てるような?」


アビー「血走った目、うわ言の様に何かを呟きながらの徘徊、そして…獲物を見つけた時の瞳孔の開き…クソっ!!ジギー中毒者だ!!リーゼちゃん逃げるぞ!!」


リーゼ「ふぁぁあ?!」



【ジギー中毒者が、廊下にある物に体当たりしながら広間に直進してくる】



アビー「ジギー中毒者は身体能力が上がるとは聞いていたが!!…っ?!おいおいまじかよ!この狭くて物で溢れかえってる廊下を、避けもせず直進か?! くそっ痛覚も麻痺してやがる!!」


リーゼ「ひっ?!!」


アビー「リーゼちゃん、俺が囮になるからその間に君は逃げるんだ、良いね」


リーゼ「そ、そんな…アビー様は…」


アビー「俺のことは心配するな。それより、合図をしたら、振り返らず走り抜けろ、裏口から出るんだ!いいな!!!」


リーゼ「っ…はいっ!」


アビー「良い子だ…行くぞ…3・2・1…今だ!行け!!」


リーゼ「っ!!」


アビー「おーっと!お前のあいては俺だ!!よそ見してんじゃねえよ!!」



【裏口から逃げだし、助けを呼びに走るリーゼ】



リーゼ「っ!!急がなきゃ!!アビー様がっ……ルービル様っ…ナナリー…」



【ルービルとナナリーの名前を呟きながら走るリーゼ。孤児院から離れた街中でルービル達と出会う】



ルービル「リーゼ!!!」


ナナリー「リーゼ様っ!!ああ、良かった…」


ルービル「リーゼ1人か?アビーはどうした?」


リーゼ「ああ、ルービル様っ!!孤児院の子供達が倒れていて、そしたら知らない男の人が襲いかかってきて!!!アビー様がっアビー様が私を逃がす為に1人でっ…」


ルービル「何?!ナナリー!」


ナナリー「…かしこまりました!!」


リーゼ「どうしましょう、私のせいでアビー様がっ」


ルービル「リーゼ、落ち着いて。深呼吸だ、アビーが危ないのはわかった。急いで向かうぞ、リーゼは…」


リーゼ「私も行きます!」


ルービル「わかった、行こう」



【ジギー中毒者に押されているアビー】



アビー「体力の消耗も ものともしない…まじで化け物だな…っと、あぶねっ。あの威力で貰ったら、ちとヤバいな。かといって他国の民を切るのは外交問題だろうし、さてどうしたもんか。おーっと、まじかっ、知恵をつけ始めたのか?このままだとここを破られるのも時間の問題か。ははは、キッツ…。リーゼちゃんはちゃんと逃げられたかねぇ…。」



【ふと窓の外に気を取られた瞬間、バリケードの隙間から足首を捕まれ引きずりだされ、首をしめられる】



アビー「しまった?!ぐあっ!!…痛っ…このバカじがらが!!…がっ…はっ…」


アビー「このっ…はなし…やが…れっ…」



【ルービルとナナリーを連れ戻ってくるリーゼ】



リーゼ「ルービル様!!ここです!!」


ルービル「居たぞ!!ナナリー行け!!」


ナナリー「かしこまりました!!はぁぁあ!!」


アビー「がはっ…げほっげほっ…サンキュー、ナナリーちゃん…」


ナナリー「どういたしまして」


リーゼ「ナナリー、前!!」


ナナリー「しまった?!」


アビー「っ!!…そうは…させない!!」


ナナリー「っ…。…ありがとうございます」


アビー「はは、けほっ…これでおあいこだな」


ナナリー「…そのようですね」


ルービル「今のうちに、彼の視界からでるんだ !なるべく距離をとるぞ」


ナナリー「かしこまりました」



【物陰に隠れながら、うごめく男から目をそらさず会話】



ルービル「アビー!一体何がどうなっている?!」


アビー「見たまんまだよ、ジギー中毒者の成れの果てだ」



【自我を無くした 大男が半狂乱で暴れている】



ナナリー「…そんな…これが…?」


アビー「身体能力が爆上がりの上、自我がない、オマケに痛覚も無いと来た」


ルービル「くっ…助ける手立ては?!」


アビー「さあね!知ってるならこっちが教えて欲しいくらいさ!」


ルービル「ちっ、自我を失ってるとはいえ自国の民だ…出来れば助けたいが…」


リーゼ「ルービル様…」


ルービル「大丈夫だ、リーゼ。君のことは私が必ず守る…だから怖いだろうけど、なるべく大きな声をださないように…出来るかい?」


リーゼ「わかりましたわ…」



【ジギー中毒者の男が手当たり次第に物を壊す、リーゼ達の近くのガラスが割れる】



リーゼ「きゃぁあっ!」


ナナリー「リーゼ様っ?!」


アビー「馬鹿!ナナリー声がでかい!!」


ルービル「ちっ、気づかれた!!」


リーゼ「あっ…私…ごめんなさっ…っ!」


ルービル「大丈夫、リーゼ落ち着くんだ!!呼吸を保って!!大丈夫、大丈夫だ!」


リーゼ「ルービル様…」


アビー「ルービル!リーゼちゃんを連れて逃げれるか?!」


ルービル「行ける」


アビー「OK、じゃあ合図を出したら行け!!俺は奴をくい止める!」


ルービル「アビー…死ぬなよ」


アビー「当たり前さ、まだリーゼちゃんに告白してないからな、このままじゃ死んでも死にきれないさ」


ルービル「戯言を…」


アビー「いいか、行くぞ…?」



【緊張感の中、ナナリーが前へ出る】



ナナリー「…お待ちください」


ルービル「ナナリー!何をしてる!」


アビー「…ナナリー」


ナナリー「リーゼ様、わたくしは…」


リーゼ「…ナナリー?」


ナナリー「いいえ、わたしは、貴方様の事がとても大切なのです」


リーゼ「ナナリー、どうしたの?ナナリー?」


ナナリー「ルービル様、これを」



【ナナリーの渡した小瓶には青い液体が入っている】



ルービル「これは?」


ナナリー「ジギーの中和剤でございます」


ルービル「なっ?!」


アビー「ナナリー、お前…」


ナナリー「…どうぞ、お使いくださいませ」


ルービル「…わかった。今は何も聞かぬ。アビー!行けるか?!」


アビー「人使いが荒いんだよなぁ、俺一応王子だぜ?」


ルービル「だが、俺の幼馴染だろう?」


アビー「はいはい、行けますよ。奴の注意を引くためにこの皿を投げ付ける。合図を出したら、奴に薬を飲ませるから、ルービルとリーゼちゃんは走れ!ナナリーは念の為、入口付近を頼む!」


ルービル「まかせろ」


ナナリー「かしこまりました」


アビー「よし、行くぞ?…3…2…1…今だ!!」



【皿の割れる音を合図に 一斉に走り出す4人】



リーゼ「ルービル様っ…」


ルービル「リーゼ!こっちだ!」


アビー「おい、デカブツ!…こっちをみろっ!…正気になりやがれ!!」


【ジギー中毒者の口に小瓶をつめ、強制的に薬を飲ませる、抵抗とばかりにアビーの手に噛み付くが次第にその力は弱って行った】



アビー「痛っ…!噛みつきやがって……ふぅ。効いた…みたいだな。中和剤は本物か…だとしたらやっぱりナナリーは…」


ナナリー「お見事です」


アビー「ナナリー、お前…いや、今はよそう。とりあえず2人の元へ行くぞ。事後処理もあるだろうしな…」


ナナリー「……かしこまりました」



【不穏な空気のまま、外に出る2人、すると目に涙を溜めたリーゼが孤児院入口で待っていた】



リーゼ「アビー様っ!、ナナリー!!」


ナナリー「リーゼ様?!」


アビー「おい、ルービル、逃げろって言っただろうが」


ルービル「リーゼが残ると言っていたからね。彼女の意思は尊重する、それに、お前が失敗する訳ないだろう」


アビー「……はぁ。ったく…。あ、そうだリーゼちゃん、俺と結婚しない?」


リーゼ「へ?」


ナナリー「……」


アビー「いや、死ぬかもしれないって思ったらさ、言いたくなっちゃって☆」


ルービル「アビー!貴様っ!!」


アビー「こんな、短気な奴より、心の広い俺の方がおすすめだぜ?」


リーゼ「丁重にお断り致しますわ!」


アビー「ありゃ、残念振られちまった」


ルービル「アビー!!お前は昔から人の物に手を出そうとしやがって!!」


アビー「あー、はいはい。ソウダネー」


ルービル「アビー!!」


リーゼ「そういえば、お2人は昔からの知り合いでしたわね」


アビー「そうそう!同じ王族どうしだし、隣国だしね、幼馴染ってやつ」


ルービル「お前が幼馴染なぞ、私の本意ではない!」


アビー「つれないなー、ルービル。君の初恋の相手は、俺だってのに」


リーゼ「…へ?」


ルービル「なっ?!」


リーゼ「あ、アビー様、そ、そそそれは本当ですの?」


アビー「んー、ほら、小さい頃、俺は姉さん達に女装させられたからさ、一目惚れしちゃったんだろうね、会ったその日に嫁に来いっていわれちゃった💝 」


ルービル「嘘をつくな!!私の初恋はリーゼだ!!」


リーゼ「へ?!」


アビー「女の子と間違えたくせにー」


ルービル「それは仕方ないだろう!貴様の姉達に、妹だと紹介されたんだから!」


リーゼ「ルービル様、今のは…そのっ」


ルービル「くっ、リーゼすまないが、一先ず城へ戻るとしよう。ナナリー、君には聞きたいことが山ほどあるんだ、一緒に来てくれ」


ナナリー「…かしこまりました」



【ナナリーと話しているルービルをよそ目に、アビーの服の裾をひき、話しかけるリーゼ】




リーゼ「あの、アビー様?」


アビー「んー?何だい?あ、さっき言いかけた、ルービルが俺と3人でいた事を内緒にしてたのは、俺の事、女の子だと思ってたのが、恥ずかしかったからだよ?」


リーゼ「いえ、そうでは無くて、さっきのプロポーズ…まったく心がはいってませんでしたが、もしかして…アビー様の好きな人は…ナ…」


アビー「 しー、内緒だよ。」


リーゼ「まあ、やはりそうなのですね!わかりましたわ!私、内緒に致しますわ!」


アビー「リーゼちゃんは本当優しいなぁ…。そんな君に、俺から1つだけ忠告」


リーゼ「はい、なんでしょう?」


アビー「ナナリーには気をつけて」


リーゼ「え?それって…どういう」


ルービル「アビー!!さっさと来い!!」


アビー「はいはい。さあ、そろそろ行こう。ルービルが凄い目でこっちを睨んでる」


リーゼ「…はい。」


ナナリー「リーゼ様、お怪我はございませんでしたか?」


リーゼ「大丈夫よ、ありがとうナナリー!…あら?何かしら?…鳥?」


ナナリー「青い鳥ですね、珍しい…私も…この鳥のように…」


リーゼ「ナナリー、どうかしたの?」


ナナリー「いえ…何でもございません。行きましょうリーゼ様」



リーゼM「お城へ戻った後、ルービル様とアビー様は情報のすり合わせや、事後処理に追われ、私とナナリーはそれぞれ別室に案内されました。色々あって疲れていたのでしょう…その日はそのまま眠ってしまいました。

翌朝、いつも起こしに来てくれるナナリーの代わりに、ルービル様が部屋へいらっしゃいました。」



ルービル「リーゼ、すまない…ナナリーが居なくなった」


リーゼ「…え?」



リーゼM「花嫁の試練を受ける前日、ナナリーは、私の前から姿を消したのでした」



3話へ続く

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政略結婚したくない2人が、他国の王子の求婚を退けるまでの3日間 ねむりねずみ@まひろ @sibainu_uta

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