この日から

買い物に出かけていたら、変な人たちに絡まれて怖くて声が出なかった。

そんな時、

「やめてください。嫌がってるじゃないですか。」

と言ってくれたのが沙良だった。

「あ?…君!可愛いね!お兄さん達と遊ぼうよ!」

「…は?」

「女の子が2人もなんて嬉しいな!」

「…残念だったな。俺、男なんだわ。そいつ俺の友達だから。離してくんね?…離さないんなら警察呼ぶけど。」

いつもより低い声で睨みながら言う紗良が怖かったのか、変な人たちは走って逃げていった。

「大丈夫だった?…って、大丈夫じゃないか…。」

しゃがんで心配そうに見つめながら

「怖かったよな。」

って優しく言ってくれた沙良に、心がドキドキした。これは多分、怖さからのドキドキじゃなくて、違うドキドキだと思う。

「…ま、俺も良くあるし?ああいう人達の扱いは慣れてるから。いつでも助けてやるよ!任せろ!」

歯を見せて笑う沙良、ドキドキしている私。

今までとても寒かったはずなのに、なんだか暑いな…。

「さーてと、あったかい飲み物買う?」

「いや、暑いから良いかな…。」

「暑い…?大丈夫?…はーい、ココアね。」

「いや、聞いてた!?」

「暑いって聞こえたけど?」

「ちゃんと聞こえてんじゃん!!いらないの!」

「しーらね。…はい。今飲まなくても良いから。とりあえず持っときなよ。」

無理やり持たされたココアは優しいあたたかさで。

「沙良みたい…。」

「ココアが?どういう事だよ。」

「しーらね!」

「真似すんな!」


こんなかっこよくて優しい沙良を見たのは初めてだった。優しいのは知っていたけど、初めてかっこいいと思った。私の心がこれは恋なんだ。と教えてくれた。

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