怠け者

 私は生来の怠け者です。なにも自信をもてない人生ではありますが、それだけは唯一断言できるのです。やらなければならないことを後回しにするのは日常茶飯事、ただただ気が向くままに日々を過ごし無下にし、川の水のごとく、ひたすらに堕落という精神の下流に身を任せ流され、気づけば後戻りできないようなところに行き着いてしまいました。そうした自覚を持ちながらも、いまさら足掻いたところで溺れるだけだからと、なにもしないのが、私の怠けさのなによりの証明であります。

 私の幸運でもあり、不運でもあるのは、比較的器用なところです。決して優秀ではありませんでしたが、大して労せずともそれなりになんとかなっておりました。いえ、なんとかなってしまっているのです。もちろん、肝を冷やす場面がなかったわけではありませんし、物事がうまくいかないことも多々ありましたが、結局どうにかなってしまったり、それなりによい方向に行ってしまうものですから、反省はほんの数日で終わり、ついぞ勤勉になることなく、怠惰な人間として、今もこうして生きているのです。

 私はこのような自分が嫌いです。嫌で嫌で仕方がありません。しかしながら、それを改善しようとすることも、自分を終わらせようとすることも、面倒くさくてたまりません。

 きっと、濁流に飲まれて、溺れ苦しみ、必死に足掻くようなときがくるまで、この性分は治らないに違いありません。そうして、そのときもすぐに諦めて溺れ死ぬのでしょう。

 私はその日をずっと待っているのであります。

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