第13話 真、だまし討ちに合う

 娘が買い物に出かけた。我が家の冷蔵庫が寂しいからだと言っているが、いたたまれないのだろう。

 いつの間にかバイクの免許を取っていたらしく、身体に似合わない大きさのバイクにまたがっていた。

 身ごもっているならもう少し体に優しくした方が良いのでは、とも思うが、あの子なりに考えたのことだろう。

 しかし、娘が来てからあのふたりの姿を見ない。

 私以外の誰かがその姿を認めるかどうかはわからないが、出てこないでいてくれるのは助かっている。

 さて珈琲でも、と重い腰を上げた時、表でエンジンをふかす音が聞こえた。娘が帰ってきたのだろう。

 娘を出迎えに行った玄関には、見知らぬ男がいた。

「えっと、ただいま」

「あの、お邪魔します!」

 娘はその男をかばうように前に立っていたが、庇われていた男が歩み寄ってきた。

「あの、娘さんとお付き合いさせていただいていまして、その……」

 あぁ、お腹の子の父親なのだな。

 娘が出ていたのは彼を迎えに行っていたのか。

「えっと、買ったもの冷蔵庫にいれたいから、そこどいて」

 娘の容赦ない言葉に、私と彼は道を開けた。買い物はしてきたらしい。

 のしのしと歩く娘の後ろ姿。なんとなく、亡き妻に似ている気がする。

「……あの、大変、申し訳ありません!」

 背後から彼の声が。

 まぁなんだ、その、申し訳ないなどと、簡単に言わないでほしいな。

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