第11話 真、娘からの一報を聞く
ふたりがいる生活は、とても賑やかだ。家の中でもトラは馬車替わりで、まさに馬車馬のように動かされていた。
「大きすぎますわね」
「老眼でもくっきりはっきりー」
どこから探し出したのか、大きな絵本を開いて、その上でなにやら座り込んでいるふたり。
「はっきり申すのも、時と場合によりますわよ?」
「おじいちゃんでもすーらすらー」
まさか私のことではあるまいな。
うむ、インスタントではあるが、今日も珈琲が旨い。
「ふーちゃん、これなんて読むのー?」
「これは、灰被りと読むのですわ」
「さっすがふーちゃん、あったまいいー」
「ふふ、勉学は淑女の嗜み。知識は色々なものの、その先を見せてくれる道具なのですわ」
ふむ、確かにその通りではある。無駄と思われる知識も、関係ないところで繋がっていたりもするものだ。
「ふーちゃんこれは?」
「突撃一番、ですわ」
「じゃあこれは?」
「ペルソナ、ですわ。想像上のナニカを示す時に良く使われますわね」
「おおおー」
「言葉の意味知っていると、名前の裏にあるものも見えたりしますのよ?」
仲良きことは、いいことだ。
このふたりを、妻も見れたらよかったのに。
考えても仕方がないことだが。
「ジリリリリリ-ン」
「あら、電話ですわ」
「ビーちゃん式呼び鈴、ジリリリリ-ン」
私の携帯が鳴っている。休みだというのに会社で何かあったのだろうか?
「あ、もしもし、私だけど」
珍しいことに、娘からの電話だ。久しぶりに帰ってくるのかも。
「お父さん、あのね、その、あたし、妊娠、しちゃってさ……」
しっかり持っていたはずの携帯が、ゴトンと落ちてしまった。
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