第9話 真、ふたりを連れ出す
ビーちゃんとフーちゃんの抗議活動が活発だ。
「無駄な抵抗はおやめになって」
「我々はー、要求するーするーするー」
ヘルメットにバンダナマスクで拡声器を振り回し、化石みたいな学生運動をするふたり。どこでそんな知識を得たのか。
外が見たいと駄々をこねる姿は、遠い昔の娘の姿に重なる。あの子も我が強くて、座り込んで泣き叫んでいたなと思い出す。
東京の学校へ行くんだと、直談判をくらったのは何回だったか。
根負けして許可したが、それが正しかったのか、いまだわからない。向こうに行ったが最後、正月も顔を見せないでいる。
あの子にとって田舎はつまらないのだろう。
仕方ない、近くの公園にでも連れて行くとしよう。
「わーい、おでかけー」
「ビーちゃん、おとなしくしていましょう。トラッキーのヒゲをつかんではいけません」
「はーい!」
ふたりはトラと一緒に猫用のケージに収まっている。トラが嫌がっているようにも見えるが、気のせいだろう。
ケージを手に、近くの児童公園へ来た。ブランコと滑り台と砂場がある、どこにでもある公園だ。娘を連れてきたこともある。
娘がいた時は大きくも感じたが、改めてみると、本当は小さかったのだな。
半端な時間だからか、誰もいない。好都合だ。
ケージを開け、トラの首輪にリードをつけようとしたが。
「リードは不要ですわ」
「トラッキー、ゴーゴー」
トラの首の後ろにのっかったふたりが、ロデオよろしく飛び出していった。
ぐにゃぁぁぁぁぁぁ
全速力で走っているように見えるトラの鳴き声が、悲鳴にも聞こえる。
「さぁ、まずは滑り台ですわ!」
「逆走ゴーゴー!」
追いかけようとしたが、滑り台のスロープから上って行ってしまった。
はぁ、娘が急に走った時はすぐに足が動いたものだが、年はとりたくないものだ。
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