第8話 真、運動へのみち

 最近、体調がいいと感じる。足も軽い。

 自炊をしている食事が減塩のせいか。

 それとも、家にいても話し相手がいる、安心感からか。

「家にこもりきりでは、身体によくありませんことよ」

「日光浴でセロトニンをつくろー」

 運動など、通勤で歩くくらいしかやってないな。

「急に運動など考えても、怪我のものですわ。自分に合った方法が一番でしてよ?」

「年寄りの冷や水になっちゃうー」

「ビーちゃん、それは言ってはいけなくってよ?」

 言ってはいけないと口にされると、こちらもへこむ。

 耳に痛いのは確かだが、今後を考えると寝たきりにもなれない。娘はいずれにせよ向こうで暮らすことになるだろう。迷惑はかけられない。

「思いつめは健康の大敵ですわ」

「病は気からー、気にしない気にしない―」

 ちょっと思っただけだ。そんなに怖い顔をしないでほしい。

 だが、外出か。独りで散歩は味気ないな。

 そういえば、妻と散歩にいったことは、あまりなかったな。もっと気ままに散策でもすればよかったのだろうな。

「思い立ったが吉日と申しますわ」

「ビーちゃんが一緒に行ってあげるー」

「当然、わたくしもですわ」

 しかし、奇妙なふたりを連れて外は歩けない。トラにも見えているということは、他に人にも見えているということになる。

「あの猫又は調伏済みですので、使役いたしましょう」

「トラッキーちゃんと一緒にお散歩ー」

 あのドールハウスはなんだったのだろうか。

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