第10話 動き出す陰謀3

 すでにオークは村の中に入っており、逃げ遅れた数名のエルフが襲われていた。


「うぁ、わあああぁぁ!!!」


 オークの筋力があれば成人のエルフなど片手で持ち上げられる。足をつかまれたエルフの青年が叫び声を上げる。

 オークがそのエルフを担ぎ上げようとしたその瞬間―――。


 ズバッ!


と緑の光がエルフをつかむオークの腕を切り落とした。


「オオオオオアアアア!!!」


 二足歩行する豚のような生物が、片腕を失ったことで苦悶の叫びを上げる。


「ふぅ、間に合った。」


 オークが気付くと目の前には白い長髪をなびかせる一人の魔法使いが立っていた。

 エルフの青年は気付くとオークに捕まりそうになった場所とは全く違う場所にいた。近くには黒髪短髪が爽やかな印象を与える、一人の青年がいた。今回のキャラバンの護衛を務めてくれる二人が来たことでエルフの青年は安心する。


「みんなもう逃げてる。あんたも早く!」


 カインはエルフの青年にそう声をかけ、彼が避難するのを見届け、オークの方に向きなおす。

 見たところオークは全部で六体ほど。その全てが武装していた。


 アストライアは右手の杖をオークたちに突き付けて、


「オークが武装するなど、貴様らの知能に見合っていないな。だれの指示で動いている。」


 この問いに対して、オークたちは咆哮と殺意で返した。


 向かってくるオークに対して、カインが一歩アストライアの前に出て迎撃態勢に入る。

 カインは気を高め、カインの体に土気色の光が収束していく。


「【土陸波どりゅうは】!」


 カインが両掌を地面にたたきつける。するとそこからオークたちの方に向かって扇状に地面が隆起していく。


 二体のオークは地面の波に飲み込まれたが、残りの四体は右と左に二体ずつ分散した。

 カインとアストライアはお互いに目配せして、二人別々の方向を追うのだった。



***



 カインが二体のオークを追いかけると、目の前に一体の斧を持ったオークが仁王立ちでこちらを睨んでいた。もう一体の姿は目視では確認できなかった。どこぞに隠れてすきを窺っているのだろう。


「はっ!獣畜生が、脳みそ使った戦い方すんじゃねぇか!」


 もう一匹の動向がうかがえない限り、常に不意打ちを警戒する必要がある。動きを鈍らせるには十分だ。


「ブモァァァ!!」


斧を引っ提げてオークが突っ込んでくる。

カインは向かってくる巨体に対して手を構える。するとカインの前に、緑色の光が楕円の刃を形成する。


「【風刃ウィンドエッジ】!」


 カインの詠唱と同時に緑の刃はカインの元から離れ、向かってくるオークに対して一直線に飛んでいく。

 オークは向かってくる緑の閃光に斧で対抗するが、普通の武器では魔法に対抗できない。できるのは“魔剣”のみである。

 案の定オークの持っていた斧は魔剣ではなかったため、オークの体は斧とともに風刃ウィンドエッジによって断ち切られた。


 刹那、カインの頭上から樹上に隠れていたもう一匹のオークが飛び降りてきた。


―――仲間をブラフに使ったのか!?


「グルルァァァ!」


 飛び降りてくるオークはその手に剣を持っており、カインに垂直に突き立てて落下してくる。


 視角外からの不意打ちにカインは虚を突かれ、オークの剣がカインの脳天を貫いた。

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