第16話 バレる
「……ちょ、悪りぃ。多分さっきの懺悔した時に指が画面に触れたっぽくて、お前と嶋田のトーク履歴を遡っちまって……」
「……あっ」
聖ちゃんと俺のトーク履歴……遡ったらすぐにおそらく、木曜日のトークが表示されるだろう。
そして木曜日ということは、俺が告白をした日で……。
「お前、嶋田のこと好きだったのか……?」
「……悪いかよ」
「いや、悪くねえけど……えっ、マジで?」
「マジだよ、ほら、スマホ返せよ」
勇一は呆然としながらスマホを俺の方へ渡した。
「てか、えっ、もう告白してんの?」
「……ああ、ちょっと勢いでな」
「マジかよ! えっ、ま、待って、急なことでちょっと頭の整理が出来ないわ」
狼狽えている勇一を見て、俺は一度大きくため息をつく。
まさかこんな形でこいつにバレるとは……。
まあいい機会だし、言っておくか。
「単純な話だろ。俺が実は嶋田のことが好きで、すでに告白をしたってことだ」
「マジかぁ……えっ、じゃあお前ら付き合ってるの?」
「いや……付き合ってないな」
「えっ、じゃあふられた?」
「いや、ふられてもない。まだ返事は保留中だ」
まだ保留中だが……どうなんだろ、いつ返事をもらえるのか。
「マジかぁ……だけど保留中ってことは、多少は脈アリなんじゃね? 嶋田ってそういうの、脈なかったらすぐに断りそうだし」
「うーん、どうなんだろうな。前向きに考えればそうかもしれん」
「そうだって絶対。うわー、だけどまさか司が嶋田のこと好きだったなんてな……だけどお前ら絶対にお似合いだと思うぜ」
「ははっ、ありがとよ」
こいつのことだから表裏なく、そう言ってくれてるだろうなぁ。
だけど聖ちゃんが原作で好きになったのはこいつで……くっ、主人公め。
「俺、ふられたらお前のこと嫌いになるわ」
「なんでだよ!? 俺関係ねえだろ!」
「冗談だよ」
まあこれは本当に冗談だ、そんなんしたらただの逆恨みだからな。
多少は恨むかもしれないけど、それでこいつを嫌いになることは絶対にない。
「だけど司はもう告白したのかぁ。なあ、俺も明日告白するから、教えてくれよ」
「何を?」
「告白の言葉というか、そういうの!」
「嫌に決まってんだろ、罰ゲームかよ」
「いいじゃん! 誰にも言わないから! 明日の参考にしたいんだよ!」
いや、別にお前なら「好きだ、付き合ってください」っていうだけで、藤瀬なら了承してくれるよ。
だから俺の言葉なんていらないと思うんだが……それを言えるわけもなく。
「はぁ、さすがに恥ずかしいから、大雑把にな」
「おお! さすが司! 太っ腹!」
「調子いいこと言いやがって……」
ということで俺は勇一に、聖ちゃんに告白した時のことを軽く話してやった。
恥ずかしいのであまり流れとかは説明せず、俺がなんて言ったかを大雑把に伝えたくらいだ。
こいつにとって明日の告白の参考にしたいのだから、聞きたいのはそこの部分だと思うしな。
そして軽く話して、勇一の最初の感想としては……。
「プロポーズじゃん」
「はっ!?」
俺が思っていた言葉とは、全然違うものだった。
「な、なんでプロポーズになるんだよ!?」
「いや、逆にプロポーズ以外の何があるんだよ。『好きだ、付き合ってください』までは普通の告白かもしれんけど、『絶対に幸せにする』はもうプロポーズだろ」
「くっ……!」
た、確かに、言葉だけを聞くとプロポーズっぽいが……!
「け、結婚してください、までは言ってないからセーフだろ……!」
「うーん、ギリギリ……?」
ああ、本当にギリギリだと思うが。
「えっ、というか司は、嶋田と結婚したいくらい好きなの?」
「聖ちゃんと結婚なんてしたら死ぬぞ、俺が」
「そんなに好きなのかよ!?」
当たり前だろ、聖ちゃんだぞ。
俺が前の世界で学校以外の時間はバイトに費やして、ほぼ全てを聖ちゃんにつぎ込んでいたのだ。
それだけ好きな聖ちゃんとまずこうやって同じ世界に入って同じ空気を吸えているだけで、もう幸せすぎるのに……。
付き合って結婚までしたら、俺はもう死んでもいいくらい幸せ、とかじゃない。
幸せすぎて死ぬ、死因は尊死とうとしだ。
「まさかお前がそんなに嶋田のこと好きだったなんて……今もなんか、聖ちゃんとか言ってたし」
「あっ、ミスった」
「いや、RINEのトーク履歴を見た時に、聖ちゃんって書いてあるからわかってたけどな」
そういえば木曜日の夜のトークの時はまだ夢の中テンションだったから、聖ちゃんって呼んでた気がするな。
だが今は聖ちゃんに二人きりの時に呼ぶのは許されたのだ、最高かよ。
……今みたいに時々、前の世界で呼んでいた名残で咄嗟に聖ちゃんと呼んでしまうことがあるが。
「あっ、てかRINEといえば、まださっきのメッセージに返してねえ」
聖ちゃんからのメッセージをこいつに見せたところで、返すのを忘れてしまっていた。
「そうだったな。というか嶋田は本当にデートの場所に来てくれるのか? それなら本当にありがたいが……」
「そうだな、それをまず聞くか」
えっと、送るメッセージは……。
『重本はそれをやってくれるのならありがたいと言ってるけど、それだと聖ちゃんにすごい負担がかからないか?』
よし、送信。
するとすぐに既読がつき、数十秒後には返事が返ってきた。
『詩帆のためだ、そのくらいなんてことない。だが詩帆には内緒にしてくれ、詩帆には東條院が邪魔しに来る可能性があるということは伝えていないからな。せっかくのデートなのに、余計な心配をかけさせたくない』
「いい子……! 大好きだ……!」
「お前、もう嶋田への気持ちを隠さなくなったな」
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