第7話 夢の中で寝る?
……さすがに愛してる、は言い過ぎたかな?
気持ち的にはそうなんだけど、RINEで送るべきではなかったかもしれない。
まあ夢の中だから、これくらい大丈夫だよな。
「はぁ……なんか好きな女の子とRINEをするって、こんな感じなんだなぁ」
現実世界で俺は好きな人なんて出来たことがなかった。
可愛いなぁ、とか、綺麗だなぁ、と思う子がいても、好きにはなったことはない。
だからぶっちゃけ、俺の初恋は「おじょじゃま」の聖ちゃんだ。
二次元の女の子に初恋をするなんてちょっと痛いかもしれないが、しょうがないだろう。
そんな女の子とめちゃくちゃリアルな夢の中で、こうしてRINEが出来ている事がとても嬉しい。
マジでこの夢、覚めないといいなぁ……。
ポムポム。
おっ、返ってきた!
『その、とても嬉しいんだが、あまり言わないでくれ。恥ずかしくて死にそうだ』
くっ……!
メッセージだけでも可愛すぎて、俺が死んでしまいそうだ……!
またスクショを撮っておく、はぁ、尊い。
やっぱり聖ちゃんのこと、マジで好きだなぁ。
このまま俺がこの世界にずっといて、彼女を幸せにしてあげたい。
原作の「おじょじゃま」だと、ほぼ間違いなく彼女は重本勇一と結ばれることはないだろうから。
聖ちゃんは原作では、藤瀬詩帆のためにずっと自分の気持ちを隠して、二人が付き合うのを協力していくみたいな立場になっている。
その過程で重本勇一と二人きりになってしまって、ちょっとドキドキ展開があるという感じだ。
多分聖ちゃんの性格からすると、二人が付き合うまでずっと重本への気持ちを隠し続けるんだろう。
そんな負けヒロイン確定のルートを歩くくらいなら、俺が聖ちゃんを幸せにする。
「こ、今回のメッセージは、別に問題ないよな?」
『うん、大丈夫だと思うよ。さっきのメッセージよりは、悶絶度は少ないと思う』
「悶絶度ってなんだそれは。というかさっきのより少ないって、多少はあるのか!?」
『もちろんあるよ。恥ずかしくて死にそうだ、なんてちょっと可愛すぎてスクショを撮るレベルだよ』
「な、なぜだ!?」
『はぁ、なんか複雑だなぁ。こんな可愛い聖ちゃんが見れるのは嬉しいけど、それが久村くんのお陰っていうのが』
「別に、あいつのお陰ってわけじゃ……それに、久村には見せれない姿を、私は詩帆に何回も見せていると思うぞ」
『っ……聖ちゃん、久村くんじゃなくて私を選ばない?』
「どういうことだ。というか詩帆には重本がいるだろう」
『重本くんと付き合ってないよ、私はね』
「な、なんだその言い方は。私だって、まだ久村とは付き合っているわけじゃ……!」
『あー、すごいベタベタな言い方だね。まだ付き合ってない、って』
「あっ、いや、違うぞ、これから付き合うっていう予定も別に、その……っ、へ、返事がきた!」
『ふふっ、いいタイミングできたね。それで、なんてきたの?』
「うっ……あいつ、なんでまたこんな……!」
『聖ちゃーん、教えてー』
「くっ……『聖ちゃんと付き合えたらすごく嬉しい。絶対に幸せにするから』って……」
『わー、わー! もう聖ちゃん、結婚しちゃいなよ!』
「そ、それは早すぎるだろ! まだお互いのことを全然わかってないし、もっと付き合ってからで……!」
『ふふっ、付き合うのは確定したの?』
「っ、違う! 詩帆、あまりからかうな! さすがの私も怒るぞ!」
『あははっ、ごめんね。聖ちゃんが可愛すぎて、つい』
「ったく……というか本当にこいつは、なんでこんな恥ずかしいことを……!」
『聖ちゃんも恥ずかしいことを言ってるから、どっこいどっこいだよ』
「こ、これほど恥ずかしいことは言ってないぞ!」
『うーん、捉え方次第かな?』
このまま夢が続けばいいなぁ、という思いを込めてメッセージを送ってしまった。
ふぁぁ……なんか眠たくなってきた。
いや、夢の中で眠くなることなんてあるのか?
このまま眠ってしまったら、目覚めた時には現実に戻っているかもしれない。
それは、嫌だなぁ……。
現実世界に未練はないって言えば嘘になるけど、こっちの世界の方が絶対に楽しい。
なんて言ったって、俺の好きな漫画の世界に入って、一番推しキャラの聖ちゃんがいるんだから。
だから、まだ現実世界に戻りたくない。
このまま眠ってしまったら、戻ってしまうかもしれないから……。
ポムポム。
あっ、この音、聖ちゃんからまた返事がきたようだ。
俺はベッドに寝転がり、重たい瞼を必死に開けてスマホの画面を見る。
『わかったから、そんなに恥ずかしいことを言わないでくれ。なるべく早く、返事はする』
……はぁ、やっぱり聖ちゃんは可愛いなぁ。
頭の中で聖ちゃんが恥ずかしそうにして、このメッセージを打っているところが思い浮かぶ。
やっぱり俺は、聖ちゃんと付き合いたいなぁ。
この世界にずっといて、こんな可愛い聖ちゃんをずっと間近で見ていたいし、幸せにしてあげたい。
ああ、だけどもう、眠気が限界だ……。
「どうかこの夢が……ずっと覚めないでいてくれ……」
俺は願望を最後に呟きながら、瞼を閉じて夢の中で眠ってしまった。
「し、詩帆、既読が三十分も前についたのに、返事が返ってこないんだが……!」
『もう遅いし、あっちも寝ちゃったのかもね』
「まだ十一時くらいだぞ? 高校生が寝るには少し早い気が……」
『ちょっと早いけど別に寝てもおかしくない時間だよ』
「わ、私の返事が気に食わなかったから、返してこないんじゃ……!」
『聖ちゃん、落ち着いてねー。あんなに好き好きアピールをしてた久村くんが、いきなり聖ちゃんの返事をそんな風に思うわけないよ』
「そ、そうだろうか……」
『多分スマホの画面を開いたまま寝落ちしちゃったんだよ』
「それならいいが……いや、もしかしたらなんか事件に巻き込まれたんじゃ……!」
『聖ちゃーん、落ち着いてー』
妄想癖が少し激しい聖、それを知っていた詩帆だがここまでなのは初めてなので、面白がりながらも少し止めるのが大変だった。
(というか聖ちゃん、久村くんのこと気になりすぎじゃない? まああれだけ言われて気にするなっていう方が無理があると思うけどね。聖ちゃんも私のために重本くんのことでいろいろしてくれたから、私も助けないとね。ふふっ、決して面白そうだから、っていうわけじゃないよ、うん)
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