第18話第一部完


ローザのあまりに悲劇的な半生の話を聞いて、イザベラは自身の本当の正体と、今の体を手に入れ命が助かった事。そして ここまでに至る様々な出来事をローザに話し聞かせた。



「フフフフッ、なら貴方は私そのモノなのね。若い綺麗な私……」


ローザはイザベラの頬に手を当てるとニコリと微笑む。突拍子もない話だが、ローザはイザベラの話す全てを信じた。




イザベラはローザの看病を申し出たのだが、ローザは頑なにそれを断った。


「イザベラ、貴方はこんな所で立ち止まっていてはだめ。貴方には 私の分まで精一杯生きて欲しいの……」


同じ身体を持つ者だからこそのローザの思い。


「色んな物事に触れて、様々な人々との出会いを貴方には経験して欲しい……」


ヴェール越しにもローザが泣いているのが分かる。もはや自分自身には出来ないそれらの事を、 自身の分身のイザベラに託したのだ。



イザベラはローザのその意思に応える為にも、新たなる新天地に旅立つ決意を固めた。



「私は、見送りに行けないけどここで 貴方の旅の無事を祈っているわ……

安心して、もう決して 母には手出しはさせないから」



ローザの言ったとおり後にミダルラは、幾多の誘拐事件に加担していたとのローザの訴えにより、残りの人生を刑務所で過ごす事となったのだ。


まあ本人としては、知らず知らずのうちに可愛いピエトロに利用されていただけなのだが、彼女には当然の報いだろう。



ーーー



イザベラは港の船着場にいた。


彼女を見送ろうとホセと屋敷の召使達が来ていたが、やはりローザの姿は見られなかった……


「イザベラさん、貴方のおかげで旦那様も安らかに逝かれました、貴方のして下さった事は決して忘れません…… お体にお気を付けて、よき旅路を」


「ホセさんもいつまでもお元気で……」



イザベラはホセと固く握手を交わすと、いい事も 嫌な事も、数々の思い出のあるボリビアのラ.プラタの街並みを名残りおしそうに見ながら船に乗り込んだ。



イザベラは名残りおしそうにホセに手を降り続けていた。


船もいよいよ出港の時間だ、様々な出会いと別れの思い出が溢るる 南米大陸から少しづつ船が離れていく。



その時 他の見送りの人々から200m程離れたゆるい丘の上に、見覚えのある人影が。


ローザがイザベラの見送りに来てくれたのだ。



イザベラにははっきりと見えた。ローザが必死に手を降り続け、彼女の行く末を心から祈るその姿が。


ローザはそのまま 船が水平線の彼方に見えなく成るまで 、イザベラの乗る船を見送り続けていた。



「さよならローザ…… 貴方の分まで 精一杯に 生きてみせるわ。そして さよなら…私の愛おしい人達…… 貴方達との思い出を糧に、私は生きていきます。さようなら」


イザベラを乗せた船は、彼女にとって新た成る新天地の北米大陸を目指して大海原を進んで行った。

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