第14話


2人だけに成ってしまったイザベラとアンナ。2人は互いを励まし合いながら 2日目の夜を迎えた。


「……きっと私も見知らぬ場所に売られてしまうんだわ…….

パ、パパ…… また合いたい……パパ、パパ……」


アンナはそのあまりの絶望的な状況に茫然自失と云った様相だ。



「アンナ諦めないで!どんな状況にあっても決して諦めてはダメ 」


そんなアンナをイザベラが励まし鼓舞する。


「…… 貴方は、私と年もそんなに違わないのに、なんでそんなに強く居られるの ? 私の事はほっておいて……」



そんなアンナの側に縛られた体のままにじり寄るイザベラ。先程の騒ぎで足まで縛り上げられてしまっているため、半身を起こしアンナに力強く訴えかける。


「大丈夫、アンナ貴方のことは私が必ず守るから。だから諦めないで!」


「イ、イザベラ……」



囚われの身の2人は寄り添い合いながら夜の時を過ごしていった。



………………



その頃 オウロの屋敷では、


ホセが姿の見当たらないイザベラの捜索願いを出した事によって、ミダルラ達は窮地に追い込まれていた。


それは、 イザベラとピエトロが一緒の馬車に同乗していたのを見た者の訴えによって、イザベラの身を案じたホセが処置をとったのだ。


その目撃者とは、常日頃 ミダルラ等に蔑められていた召使いの1人だった。


屋敷の中では、落ち着きなくミダルダが自室内をうろうろと彷徨い歩いている。


「やばい、やばい……どうしてこんな事に……」


ストレスから自身の親指の爪がギザギザになるまで爪を噛み続けるミダルダ。


「落ち着くんだミダルダ、こうゆう時は焦ってはダメだよ」


「ピエトロ、で、でも……」


追い詰められたミダルラは、この事態から脱するための行動に出ることにした。


それは、イザベラを殺すという決断だった。



「こ、こうなれば…… ピエトロ、今夜中にあの小娘を殺しなさい。だ、大丈夫よ、証拠さえ出なければなんとでも誤魔化し通せるわ……」


血走った眼でピエトロに命令を下すミダルダ。


「……それしか方法はなさそうだね」



ピエトロはフウと溜め息を一息吐き吐き出すと、懐に銃を仕舞い込みイザベラの元に向かった。



ーーー



イザベラの元に向かう最中、ピエトロはある考えを廻らせていた。


「このままではミダルラが捕まるのは時間の問題か……

あのおばさんが遺産を相続するまではと我慢してきたが、人流しでも稼げる様にも成ってきた、そろそろあのおばさんとはオサラバだな」



ピエトロの馬車の手綱を握る手に、より一層の力が入る。


「あれだけの上玉 殺すには勿体無過ぎる。だからあの娘はこれまでの賃金代わりに僕が頂くとしようか。

そして明日の朝には、人流しで稼いだ金とイザベラと共に海外に高飛だ! フフフッハッハハハハ!」



そんなピエトロの悪巧みなぞ 知る由もないイザベラ達。その身にある危機が迫っていた。


「おいお前たち、あのクソアマに先程のお礼をたっぷりと思い知らせてやろうぜ!」



それは先程の、2人の娘が連れて行かれる時のイザコザで、安いプライドを傷つけられたミヒャエルが、その仕返しをしようと企んでいるのだ。


「幸いピエトロの奴は明日の朝までここには来ない。その間たっぷりと可愛がってやるぜ 。お嬢様ちゃん待ってろよ、クケケケケ! 」



イザベラは眠っていた。

ミヒャエル達がその扉を勢いよく開け放つまで。



「よおクソアマ!さっきはよくも俺様に恥をかかせてくれたな、その償いをしてもらうぜ !」


その突然の男達の愚行にイザベラが、事態を把握しようと半身を起こした。


「!、な、なんのつもりな……」


ミヒャエルの合図で 部下の男が 2人がかりで、縄に縛られたままのイザベラを押さえつける。


イザベラの隣りにいたアンナはこの状況に、巻き込まれない様に物置の隅で震える事しか出来ない。



「グッ!……」


常人の2倍の身体能力を持つイザベラが手を押さえつける男を振り解こうとするが、男も必死に抑えているためびくともしない。


さしものイザベラでも、男1人にその腕を押さえつけられていてはどうしようも出来ない。


男が腕を押さえる中、ミヒャエルがイザベラの手の縄をナイフで切る。


「縛られたままでは興に欠けるからな。お前は信じられん力をもっている、だがこれでは抵抗はできまい」


そしてミヒャエルがイザベラを襲おうとのしかかっていく。


「や、やめ……」


「さあ 楽しませてくれよ!ヒャハァ!!」


ミヒャエルが 勢いよくイザベラの服の胸元を破りとる。するとイザベラの豊満な胸があらわになる……


「ヘヘッ堪らねえぜ!」


ミヒャエルがイザベラの豊満な乳房に手を伸ばそうとしたその時、

人間としてではなく、ミパ.ン.ルゴとしての彼女の防衛本能が最大限に発揮される。


彼女の身体から青白い光が放たれて、魂に刻まれた一族の力が解放されたのだ。



''能力開放"それは、この危機的な状況下で、彼女の脳内にエンドルフィンに似た物質が分泌された事により、彼女の中に眠りしミパ.ン.ルゴ本来の力が通常時のおよそ3倍と成って発揮されたのだ。


常時人の2倍の力を有している彼女の力が、脳内麻薬によっておよそ5倍にまで跳ね上がった。


それは人の腕など容易く引き千切る程の力……



イザベラを押さえつけていた男の1人は、彼女が軽く腕を振るっただけにもかかわらず、その頭を砕かれ脳味噌を撒き散らしながら崩れ落ちた。


もう1人の男は壁に思いっきり叩きつけられた。その時の衝撃で全身の骨を砕かれ、そのまま動かなく成ってしまったのだ。


「 な ! ば、化け物か……」


ミヒャエルは咄嗟に常に懐に忍ばせている護身用の大型のナイフを取り出すとそれを構える。


だが今のイザベラには意味をなさなかった。


ミヒャエルが切り掛かって行った処をあっさりと交わされると、一瞬でその心臓を掴み取られてしまったからだ。

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