第13話



イザベラと共に捕まっている娘達は、地元の原住民風のイグとステアという15歳ぐらいの娘が2人と、もう一人は赤髪の似合う16歳のアンナと云うオランダ移民の娘だ。


イザベラは墜落船での4ヶ月弱で、スペイン語と ポルトガル語、原住民の言語を完璧にマスターしていた。


そこで 彼女達に捕まった時の詳しい状況を聞いて行く事にした。


まずは2人組の原住民の娘達から話を聞く事にした。2人の話しでは、彼女達は同じ村に住んでいる友達だしく、村から1km先の水汲み場から攫われて来たという事だ。


きっと前々から、彼女達が水汲みにくる処を狙っていたのだろう。


次にアンナにも話を聞いてみた。


「アンナ、貴方は何処から攫われて来たの?」


「……わ、私は、お父さんと乗っていた馬車が襲われて、それで……」


そこからアンナは、下を向いたまま話さなくなってしまった。きっとこの場に居ない父親の身に何かが有ったのだろう……


それを悟ったイザベラは、それ以上聞く事をやめ、そっとしておいてあげる事にした。


そしてイザベラは、彼女達の話やその場の状況などから、自身が置かれた立場がとても危ういと云う事をあらためて自覚した。



イザベラ達は 逃げられない様、縛られたままの状態で 5m×5mの物置と思われる部屋に閉じ込められていた。


その部屋の中には 縄を切れそうな鋭利な物はなく、有るのは殻の木箱や酒樽、穀物類が入った袋などしか見当たらない。


唯一の出口の扉には、外から頑丈な鍵が掛けられており開ける事は無理そうだ。


まあ 後ろ手に縄で縛られている今の状態では、確かめ様も無いのだが。



「……私達、これからどうなっちゃうんだろう……」


「だ、大丈夫よ…… き、きっとお父さん達が探し出してくれるわ……」


同郷のインディアンの2人は、寄り添い合いながら、互い同士で慰め合い震え慄いている。



「も、もうダメよ…… 私達は皆、売られるか殺されるんだわ……」



父を殺されたであろうアンナは、自暴自棄になっている様だ。目の前で実の父親を殺されたのだ、それも無理からぬ事だろう。


「自暴自棄になってはだめよ、諦めないで この状況から脱する方法を考えましょう。」



彼女たちが互い同志を励まし合いながら状況を伺っていると、ミヒャエルが見知らぬ男等とイザベラ達の元に現れたのだ。



「先ずはそっちの2人だ」


ミヒャエルが地元民の娘2人を、連れ出す様に配下の者に命令する。


悲しい事に 2人の買い手が見つかったのだろう。



2人は自分達の状況を悟ると、大声で泣き叫び抵抗を試みるが、縄で縛りあげられたその状態では泣き叫ぶのが精一杯の抵抗だった。


2人は互いの名を呼び合い精一杯にもがき抵抗するが、どうにもならない。



その光景を黙って見過ごす事の出来なかったイザベラは、縛られた身体のままに立ち上がると、2人を連れて行こうとしている男達に目掛けてタックルを放っていったのだ 。


縛られているとはいえ、常人の2倍の力をもっているイザベラのその一撃は、男の一人りを壁に叩き付けその気を失しなわせるほどの威力があった。


「な、なんだこいつは!?」


予想外のイザベラの抵抗に一瞬時が止まる男たち。


「今のうちに早く逃げて!」



そお叫ぶとイザベラは、もう一人の男にもタックルをお見舞いする。その男も壁に叩き付けられ唸り声をあげる始末。


その光景を見ていた2人の娘は、出口目指して走り出した。


「こ、このクソアマ!!」


1人残されたミヒャエルは、イザベラのまさかの行動に驚き懐のナイフに手を伸ばす。



「まて ! その嬢ちゃんに手を出すんじゃない。」



その声と共に、騒ぎのスキに逃げ出した2人の娘と共にピエトロが現れた。


2人娘はピエトロの持つ銃に脅されて戻って来たのだ。



「惜しい、あと少しで逃げ出せるところだったが…… だが諦めるんだな。」


運の悪い事に、忘れ物を取りに来たピエトロとかち合ってしまったのだ。



「よくもやってくれたなこのクソアマがぁ!!」



激昂したミヒャエルが怒り任せにイザベラを薙ぎ倒すと蹴り他くる。


「グッ……」


自分が抵抗すれば他の娘に危害が加わるかもしれないと、イザベラはそれを耐える。



「おい それぐらいにしておけ! その嬢ちゃんは特別なんだ。売り物に傷でも付いたら事だからな」


イザベラを蹴りたくるミヒャエルをピエトロが諌める。


「チッ、」


怒りの収まらないミヒャエルは 、今度はイザベラにタックルを食らい気を失っていた部下の男等に怒りの矛先を向ける。


「いつまで寝ているつもりだ!早く目を覚ませ !!」



その光景を横目にピエトロがイザベラに話し掛ける。


「まったく 僕がいなけりゃどうなっていたか……

イザベラさん、あんた可愛い顔して大した女だよ」


「……貴方達のしている事は決して許される事ではないわ。その報いは必ず貴方達の元に跳ねっ返ってくる、覚悟なさい!」


「フフン そいつは楽しみだ、僕にどんな罰があたるのかな。フフフフフフッ」



そしてイザベラの抵抗も虚しく、無惨にも2人娘はミヒャエル達に連れていかれてしまったのだ。

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