第7話
ホセと分かれてイザベラは、一人でローザの絵の前に来ていた。
イザベラは人間に転生する前のミパ.ン.ルゴだった時の事を思っていた。彼女の実の父の事を。
彼は滅びかけていた‘ミパ.ン.ルゴ’達を先導し、彼等を彼の地まで導いた。
彼の名は “ナコス・カル・ミ・ギム”
‘失われた 地の放浪者’ 我々で云う処の 奴隷と同じ意味合いの名だ。
元奴隷だった彼は、ミ・ゴウの平均寿命である3千年を遥かに越える1億年の長きを生きたのだ。
その1万と2130番目の子がイザベラで有る。
彼女は父から 、計り知れない数々の物事を教わり、無償の愛を注がれて成長した。
「……」
彼女は思う、なぜ人間は、その家族達は、ただ無償に愛し支え合う事が出来無いのかと。
そして彼女は思う、あの暖かく偉大だった父の事を。
イザベラが これからしばらくの間 暮らす邸内を散策していると、綺麗に整えられている中庭に辿り着いた。
色とりどりの綺麗な花が咲き乱れる様は、イザベラの好奇心を おおいに刺激した。
そんなイザベラの元に歩み寄る者がいた。
180cmの身長にギリシャ彫刻の様な体、サラサラな金髪を肩口まで伸ばし、その顔は役者でも通用するほどに整っている。
キザな態度に自身満々な振る舞い、この館の奥方ミダルダのお気に入り庭師のピエトロだ。
まあ庭師とはいっても名ばかりのものだが。
「やはっ!こいつは驚いた、本当にローザ嬢 ソックリじゃないか……」
「…… 貴方は?」
「始めまして セニョリータ。俺はこの館で庭師をしているピエトロて云うんだ、よろしく」
ピエトロがまるで役者の様に大袈裟な身振りで、いったん胸に当てた手を握手を求めてイザベラに差し出す。
「……」
イザベラの反応が悪いと見ると大袈裟なリアクションを交えて手を引っ込める。
「これは手厳しい…… 俺の握手を拒んだのは君がはじめてだよ」
「…… 私に何のようですか?」
ピエトロからよい印象を受けなかったイザベラが、事務的に用件をうかがう。
「ここに、この屋敷に居るのは他にも目的があるんだけどね、奥方の相手ばかりだと少々過食気味でね。」
「!」
そしてピエトロはなでなでしく、イザベラの肩に手を添えて来たのだ。
「君みたいな素敵なセニョリータが俺の相手をしてくれたら嬉しいなてね」
圧倒的なまでの自信、今まで女性に断られたことがないのだろうピエトロはイザベラを口説こうとしているのだ。
だがイザベラはピエトロのその手を払うと、無言のままにその場を立ち去った。
「…… 本当、つれないねぇ……」
そう呟くとピエトロはイザベラが去って行った方に嫌らしく計算尽くな視線を向ける。
そして巻きタバコに火を着けると、何事もなかったかの様に庭の木の枝を切りはじめた。
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