第5話 変事
業務日報
驟雨の月七日
記録者 コンス侯爵家冒険公社 スーナ支社長代理 学士ヨッヘン
収支については帳簿通り問題なし。雨季につき、買取は少なく雨具をはじめとした販売が多くなる。ひさしぶりの要塞都市からの荷駄隊も台数が半減している。屋根の下で作業したいと文句を言われた。支社長がもどったら相談する、とお茶を濁す。
支社長が帝都に呼びつけられて四日たった。そろそろ到着して、呼びつけた皇子の前で緊張しているころあいだろう。
受付嬢のイサベルが魔法使いヨタカの居場所を聞きに来た。彼女がヨタカに一方的なひいきをやってることはみんな知っているし、彼の情報は彼女とその友人にはもらさないよう支社長から厳しくいわれているのではぐらかす。ヒステリーをおこしたので警備のヨンさんにつまみ出してもらった。
業務日報
驟雨の月九日
記録者 コンス侯爵家冒険公社 スーナ支社長代理 学士ヨッヘン
収支帳簿の通り問題なし。
雨季には間引けない魔物が町に流れてくるが今年はほとんど来ない。密猟者がとりすぎたせいだろうか。密猟騒動については侯爵家同士でほぼ話がまとまっているそうだ。あとはツァーン侯爵家から実地検分が来るので保管しているそのほかの証拠を見せるだけとなる。密猟者の拠点で見つかったものや、密猟による取れ高の減少がわかる記録とか。
長々と滞在していた伯爵夫人がスーナ伯爵家を退去するとのことで、護衛の依頼が発生。気前よく払ってくれる依頼主で、お茶をひいている冒険者の半分が護衛に雇われた。
業務日報
驟雨の月十一日
記録者 コンス侯爵家冒険公社 スーナ支社長代理 学士ヨッヘン
収支の記録に瑕疵を発見、訂正を行う。
ゴブリンの使いが来訪。森の魔物が少なすぎるという。坑道でおかしな唸りが聞こえ、伯爵領にあるダンジョンの入口が閉じたそうだ。ゴブリン村は地下に退避するので、驟雨の月のおわりまで連絡できない。
魔法使いヨタカがダンジョンから魔物があふれる兆候かもしれないと警告を行ったので、伯爵領は厳戒態勢にはいったが、伯爵の兵があいかわらずなので心配だ。
業務日報
驟雨の月十三日
記録者 コンス侯爵家冒険公社 スーナ支社長臨時代理 騎士ステウス
状況確認継続中。帳簿は無事だが、人的被害が大きすぎる。
弊社もヨッヘン支社長代理、キリト会計員、社員イサベル、ミリー、ジャックの五人を失った。魔法使いヨタカの指揮がなければ全滅していたかもしれない。伯爵家のほうも甚大な被害を受けている。未確認だが、二十人ほど失ったらしい。
個人的な感想だが、雨の中で戦うのは嫌なものだ。
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