第4話 帝都からの来訪者
業務日報
新緑の月十日
記録者 コンス侯爵家冒険公社 スーナ支社長 男爵サイアム
収支報告は帳簿の通り。素材供給は安定してきた。
密猟者の拠点の捜索結果が出た。引き払い済の無人で、何も残っていなかったように見えたが、近くの洞窟に雑多なものが櫃いっぱいに押し込まれているのが発見されたそうだ。ツァーン侯爵家冒険公社の公印のはいった受領証と、偽名と思われる商人との取引記録が出たので証拠は固まった。捕縛した密猟者と保護したその家族は別途依頼をおこなって直接コンス侯爵家の別邸まで送り届ける手配をした。あとは両侯爵家での交渉になる。その前に侯爵の信任篤い誰かが確認に来るだろう。特に当支社の損失額の水増しがひどくてあちらの帳簿と全くあわないなどというのは避けないといけない。試算と検算をもう一度やるべきだ。
別件だが、フロント業務のI嬢の勤務態度について苦言があがっている。どうやら客人にいれあげているらしい。説諭を実施。これで少し控えてくれるとよいのだが。
業務日報
新緑の月二十日
記録者 コンス侯爵家冒険公社 スーナ支社長 男爵サイアム
収支報告は帳簿の通り。いつものことだが雨が多いため素材の集まりが悪い。
一昨日、荷駄隊とともにやってきた本家の従士は森から戻ってきていない。
念入りに再調査中らしい。
ゴブリン村との次回の交易の詳細が固まってきた。今度はどれくらいもらえるかとスーナ伯爵がうるさい。娘の婚姻がきまってものいりだそうだ。
I嬢の友人を称する貴婦人が護衛二人と侍女一人を連れてスーナに来た。身分的につりあわないので気になる。I嬢は近衛隊に代々つとめる騎士爵家の娘でこのご婦人は伯爵夫人。わざわざ訪問してくるほどの交友は考えにくい。おそらく彼女が余計なことをして、皇子か側近が客人の顔を確かめるために送り込んだのだろう。
客人に相談して数日戻ってこれない定常依頼に出てもらう。
業務日報
驟雨の月一日
記録者 コンス侯爵家冒険公社 スーナ支社長 男爵サイアム
収支報告は帳簿の通り。本格的な雨季になった。稼げないので冒険者たちは要塞都市や帝都に移動して減ってしまう。こちらも視界の悪い中での狩りは勧められないので、警邏や護衛の補助くらいしか依頼が出せない。スーナ伯爵の兵士が雨の中をきらって出してくる依頼だが、やはり人気は低い。
客人は侯爵領のダンジョンにこもってもらっている。「友人」の連絡待ちだ。
I嬢になじられた。彼女はとんでもない勘違いをしているが、それをただすと別の面倒がおこるので、好きにいわせてから、私の流儀ではないが脅しをいれさせてもらった。実家に帰ってもらうぞ、と。わけありでここにいる彼女はそうなれば厳しいことで有名な尼寺に押し込まれることはわかっている。恨みがましい目でにらまれた。
彼女の友人の伯爵夫人はまだ居座っている。取り寄せて贈り物をかかさないので居候先のスーナ伯爵は文句をいわない。
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