第3話 露見
業務日報
新芽の月三十日
記録者 コンス侯爵家冒険公社 スーナ支社長 男爵サイアム
収支報告は帳簿の通り。価格変動なし。
十名からなる密猟者を捕捉し、二名を捕縛したとの知らせ。逃亡中一名を除くと全員抵抗の末死亡。当方の犠牲者は重傷者一名のみ。客人の指揮によるところが大きい。本人は頼みこまれて断り切れなかったという。
そろそろ何か手をうたなければ「友人」にもうしわけないことになる。
業務日報
新緑の月三日
記録者 コンス侯爵家冒険公社 スーナ支社長 男爵サイアム
収支報告は帳簿の通り。素材の供給量が昨日に続き回復傾向。密猟者の討伐の効果と判断してよい。討伐隊を解散し、金一封を配布。
密猟者は逃散したどこかの農民のように思われる。捕縛した二人の供述も整合している。真偽と逃散農民なら誰の領地からどういう事情で逃げたかを確かめる必要がある。農民を称しながら魔物狩に慣れているところから、弊社と同業の冒険公社をもっているツァーン侯爵家を疑っているが証拠がない。
ゴブリン村と最初の大規模取引完了。予想以上の収穫で前借分の現金を償却できそうだ。彼らにもミスリルの調合ができるとは知らなかった。ゴブリンチーフの言うことをうのみにすれば、エルフは彼らのミスリルを盗んでいるのだそうだ。
事実として、供給は少ないものの弊社は安くミスリルを仕入れるルートを確保したといえよう。
業務日報
新緑の月四日
記録者 コンス侯爵家冒険公社 スーナ支社長 男爵サイアム
収支報告は帳簿の通り。
本日、要塞都市クロイツより弊社荷駄隊到着。予定通り出荷分を積み込み明後日出発予定。ミスリルの入手ルートについては秘密厳守であるため、荷駄隊および要塞都市の本社要人への連絡票を親展で用意した。
侯爵領の森にて所属不明の男女九人を保護。うち子供四人、女三人、成人男性二人は老齢。密猟者の身内と思われる。スーナ伯爵に引き渡したくないので、侯爵領にとめおくよう指示。明日、私も現地にいくことにする。
業務日報
新緑の月六日
記録者 コンス侯爵家冒険公社 スーナ支社長 男爵サイアム
収支報告は帳簿の通り。
荷駄隊の出発に間に合わなかったため、次回までに報告書と証拠、証言を念入りに集めて本家のほうに知らせることにする。
ツァーン侯爵家ではないが、分家でありあちらの冒険公社の要職にある西ホルク男爵の領地の農民と判明。本家侯爵家からのノルマ増大に耐えかねて密猟を決意したらしい。家族を呼び寄せた理由は察するところ多い。
臨時の依頼を発行し、数名の冒険者を彼らの住んでいた場所の捜索に出した。
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